手術直後に準強制わいせつ罪の医師 最高裁が実刑破棄、審理差し戻し

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして準強制わいせつ罪に問われ、1審で無罪、2審で実刑判決を受けた男性医師(46)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は18日、DNA型鑑定の審理が尽くされていないとして、懲役2年とした東京高裁判決(2020年7月)を破棄し、審理を高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。
医師は16年5月、東京都内の病院で女性の右乳腺腫瘍を摘出する手術をし、直後にベッドで寝ていた女性の左胸をなめるなどしたとして起訴された。捜査段階の鑑定で、女性の左胸から医師のDNA型が検出されたが、1審・東京地裁は19年2月、麻酔の影響で女性に幻覚が生じる「せん妄」があった可能性を認め、DNA型の検出についても「会話中に飛んだ唾液の可能性が消えない」として無罪とした。2審は、証人出廷した精神科医の証言を基にせん妄の可能性を否定し、「検出されたDNAの量が多く、会話の飛沫(ひまつ)では説明できない」として逆転有罪とした。
小法廷は「精神科医の見解は医学的に一般的ではない」とし、せん妄の可能性については1審を支持した。その上で、被害の有無の判断には、検出されたDNAの量が胸をなめた際に付着した多さと言えるかが重要だとした。だが、2審は検察側、弁護側双方のDNA型鑑定に関する証拠の取り調べ請求を却下しており、「疑問点が解消しておらず、著しく正義に反する」と判断した。
主任弁護人の高野隆弁護士は判決後の記者会見で「2審が科学からかけ離れていることが明確になった。最高裁は無罪を出すこともできたはずで、被告に過酷な負担を強いる判決だ」と述べた。最高検の吉田誠治公判部長は「差し戻し審での的確な主張・立証に備えたい」とコメントした。【近松仁太郎】