2022年のノーベル医学・生理学賞は、絶滅した人類のゲノム(全遺伝情報)と現代人との関係を示した研究成果に贈られることになった。ゲノム情報の統計的解析が専門の大阪大の岡田随象(ゆきのり)教授(遺伝統計学)は3日、「現代人の病気に、何万年も前のネアンデルタール人の遺伝子が関わっている。現代人だけを見ていてもわからないことが、古人類のゲノムから見えてくる」と意義を解説した。
今回、受賞者に選ばれたのは独マックス・プランク進化人類学研究所ディレクターのスバンテ・ペーボ博士(67)。世界で初めてネアンデルタール人のゲノム配列を調べたことで知られる。
岡田氏によると、人種などによって差はあるものの、現代人のゲノム情報の数%はネアンデルタール人に由来する。新型コロナウイルスに感染した際の重症化リスクとの関わりが指摘される遺伝子にも、ネアンデルタール人から受け継がれたものもあるという。
岡田氏は「病気に直結したゲノム研究も多い中で、ノーベル医学・生理学賞に古人類のゲノムが選ばれたのは少し意外だった」としつつ、古人類のゲノム研究の奥深さを強調し、「古人類はネアンデルタール人以外にもいる。調べていくとまた、面白いことがわかるに違いない」と声を弾ませた。