自動車解体施設「ヤード」の設置数は10月末現在、千葉県内で全国最多の648か所が確認され、依然として増加傾向にあることが県警のまとめでわかった。鉄壁に囲まれているヤードは、外部の目が届きにくく、盗難車が持ちこまれる違法行為の温床ともなっている。県警は関係機関と連携し、警戒を強めている。(鶴田瑛子)
佐倉市生谷の県道脇には、鉄壁に囲まれた広さ1000平方メートルほどのヤードが20か所以上、立ち並ぶ。ヤードの中には、解体された中古車が所狭しと並べられている。
11月下旬の昼下がり、ヤードの一つでは、作業員がトヨタ車の修理に追われていた。安く買い取った事故車を修理し、県内や埼玉県などの大規模な中古車オークションにかけるためだ。コンテナ船の運搬費の高騰で現在は輸出を中断しているが、コロナ禍前は、アラブ首長国連邦のドバイや英国に向けて輸出していたという。このヤードを経営するアフガニスタン人男性(46)は「日本車は少ないガソリンで動くため、海外で人気だ」と話した。
県警国際捜査課によると、県内のヤードは2017年10月末に545か所だったが、21年同期は617か所に増え、今年同期は648か所と増加傾向にある。成田空港に近い佐倉市や四街道市などの印旛地域に6割のヤードが集中する。
県内になぜ、これほど多くのヤードが設置されているのか。県警の担当者は、首都圏に通じる高速道路網が整備され、ヤードに適した平らな土地が比較的安価で確保しやすいことが要因とみている。
多くのヤードは適正に経営されているとみられるが、中には盗難車を解体して輸出している違法なヤードが、県内外で相次いで摘発されている。自動車盗の発生件数が多い県でヤードの数が多い傾向にある。県内では昨年、全国ワーストの759件の自動車盗被害が発生した。
違法ヤードへの対策は、警察と自治体との連携が欠かせない。県は15年、警察などと合同でヤードへの立ち入り調査ができる条例を全国に先駆けて施行し、昨年は741か所で立ち入り調査を実施した。
佐倉市の県印旛合同庁舎では11月22日、県警のほか、印旛地域の自治体や消防、日本自動車リサイクル機構などの関係機関が対策会議を開き、連携して情報を共有していくことを確認した。県警の田中健一・組織犯罪対策本部長は「ヤードの適正化が治安維持の喫緊の課題だ。官民一体で不法ヤードを生まない環境づくりを進めたい」と述べた。