岸田文雄首相が新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同等の「5類」に今春から引き下げると表明した20日、各地で経済活動の回復に期待する声と、感染対策の変更に対する不安の声が交錯した。学校、自治体、飲食街-。コロナ禍でさまざまな制限を受け、対応に苦慮してきた現場はどう変わるのか。
「2次会復活も」
「感染対策が緩和され、会社の人同士の会食や接待などが増えてくれたら」
5類引き下げへの期待を語ったのは、東京・JR神田駅近くのビジネス街にある「いわし料理 すゞ太郎」の金井佑介店長(37)だ。金井さんによると、社員同士の会食を控える会社はまだ多く、ビジネス街の飲食店の客足は、週末の繁華街ほど戻っていないという。
東京・銀座のビストロの女性オーナー(52)は「2次会が復活してくるのではないか」とみる。ただ、緩和される見込みの屋内でのマスク着用は場面によって維持するつもりだ。
「マスクをせずに話すと想像以上に飛沫(ひまつ)が飛ぶことをコロナ禍で学んだ。料理の説明をする際は引き続き着用したい」
見直し言及
学校現場は戸惑いを見せた。
「感染拡大の防止と教育活動の両立をはかることで、子供たちが安全な環境で学校生活を送れるように専門家の意見を聞きながら検討したい」。永岡桂子文部科学相は20日、閣議後の記者会見でこう述べ、学校でのマスク着用の有無など感染対策の見直しに言及した。
学校現場では文科省の衛生管理マニュアルが感染対策の指針となってきたが、同省幹部は「5類になれば、国から求めるものはなくなることになるだろう」とみる。具体的な方針はまだ決まっていないものの、「うまくやらないと混乱も起きかねない」と語った。
すでに学校現場では不安も広がる。横浜市立校の校長の1人は「感染対策が緩和されても当面は警戒を緩めることはない」。音楽の合唱など飛沫(ひまつ)拡散が懸念される場面もあるため、「状況に応じて判断していくしかない」という。
東京都内の公立小に勤務する女性教員は「屋内でのマスク着用が不要になったとして、自分はどうすべきなのか…。教員の判断が子供たちの判断に暗に影響を与える可能性もあるし、保護者の目もある」と心配そうに話した。
公費に注目
5類引き下げで、感染者の健康観察や入院先の調整、軽症者向け療養施設の設置などの自治体が担う役割は小さくなり、業務負担も減ることになる。
ただ、東京都の担当者は「ウイルスが急に消えるわけではない。感染が続く限り、何らかの対応は必要になる」と指摘する。
5類になれば診察や入院ができる医療機関が広がり、医療の逼迫(ひっぱく)を抑えられるとみる専門家もいる。だが、都の別の担当者は「院内感染のリスクを考えて診察しない医療機関もあるかもしれない」と想定する。
自治体側が注目するのが、公費負担の在り方だ。自治体が新型コロナを診察する医療機関に国費で支給してきた「協力金」の仕組みを当面は維持しなければ、コロナ対応の医療機関は、増えるどころか、かえって減りかねない。
小池百合子都知事は20日の記者会見で、「保健・医療提供体制や公費負担の在り方などを(国は)早期に示す必要がある」と指摘し、政府に対し、財政支援の継続などを求める要望書を提出した。