ニュース裏表 平井文夫 旧民主党議員に「反省しろ!」とドヤ顔で言われても…子育て支援論議のピントがずれている 岸田首相「育休中の人にリスキリングを後押し」発言

国会の衆院予算委員会での、子育て支援についての議論が、何かピントがずれていた。旧民主党の議員が、児童手当の所得制限廃止について、「私たちの子ども手当に反対したことを反省しろ」と、岸田文雄首相にドヤ顔で迫ったときには、「ちょっと待てよ」と思った。
岸田政権の「異次元の少子化対策」に賛否はあるが、旧民主党の人から「反省しろ」と言われる筋合いはない。所得制限廃止の言い出しっぺである自民党の茂木敏充幹事長が「反省する」と言ったので、岸田首相にも「反省」させようと思ったのだろうが。
民主党は2009年、「中学卒業まで1人当たり月額2万6000円の子ども手当を支給する」などのマニフェストを示して政権を獲得した。ところが、財源である「埋蔵金」は見つからず、結局半額の1万3000円でスタートした。それも2年で終了した。
子ども手当は、民主党が財源を見つけられなかったから失敗したのであって、自民党が反対したからではない。だから、「どちらが悪い」とか「反省しろ」とかいう話ではない。新しい政策を考えるなら、その財源を示さなければダメということなのだ。
「所得制限なき児童手当」をダメな政策だとは言わないが、国民が納得できる財源を見つけられるのか。国民は自分が負担して、年収何千万円の人に児童手当を配ることに納得できるのか。
子育て支援でもう一つ、ピントがずれていることがあった。
岸田首相の「育休中の人らにリスキリング(学び直し)を後押しする」との発言に対し、1月29日のNHK番組で、野党は「子育てと格闘しているときに、できるわけがない」(共産党の小池晃書記局長)、「育休中にリスキリングしろとはがっかりした」(国民民主党の榛葉賀津也幹事長)などと総攻撃した。
これに対し、国民民主党の伊藤たかえ参院議員(2児の母)がツイッターに、「リスキリング時期の例えに『産休』は適切でない。産休・育休とごっちゃにするのもやめてほしい。『育休』中にリスキリングしたい人はしたらいい」と投稿していたので、なるほどと思った。
自民党の松川るい参院議員(この人も2児の母)も、「可能な方は、育休中にも堂々とリスキリングする機会を享受してもらいたいし、周りの方はそれを批判しないで」「私自身、育休中に金融・投資、経済の勉強をさせてもらいました」と投稿した。
もし奥さんにワンオペ育児を押しつけてきたオヤジ議員が、「産休」と「育休」の違いも知らずに子育て支援についてピントのずれた議論をしているのなら、一度、奥さんにその辺の話をきちんと教えてもらってからにした方がいい。与党も野党も、子育て政策は育児をやったことのないオヤジだけで決めてはいけないのだ。 (フジテレビ上席解説委員)