大阪の病院突っ込み事故 犠牲の女性「家族の太陽だった」単身赴任の夫、悲報信じられず

大阪市生野区巽南の生野愛和病院に乗用車が突っ込んだ事故で、亡くなった口池(くちいけ)邦子さん(75)の夫、幸一さん(75)が産経新聞の取材に応じた。「家族の要で、太陽のような人だった」と亡き妻を振り返り、「長生きしてほしかったのに残念だ」と胸中を明かした。
「明るく人に尽くす人間だった」。仕事一筋で現在も単身赴任中の幸一さんに代わって家族をまとめ、法事や旅行の準備を中心になって進めるなど、いつも家族を引っ張る存在だった。
昨年は長女の家族らを含めた13人で沖縄旅行に行き、今月下旬にも愛知県への家族旅行を計画。孫娘に卒業式ではかまを着せるため、上京する予定もあったという。多趣味で、着物のリメークや書道などを楽しんでいた。
思いやりは家族以外にも深かった。現場の病院には事故で犠牲になった黒田シマ子さん(86)の息子が入院。邦子さんは足の悪い黒田さんを車に乗せ、毎週のように一緒に見舞いに行っていた。いつもと同じように付き添った先で、事故は起きた。
邦子さんの家族に事故の連絡が入ったのは1日午後8時半ごろ。幸一さんは単身赴任先の横浜市で次女から連絡を受けた。「あり得ない」。そう思ったが、朝一番の新幹線で大阪に戻り、悲報が現実であることを実感した。
大阪府警生野署は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで、車を運転していた呉昌樹容疑者(71)を現行犯逮捕。幸一さんは「妻だけでなく、10年15年続くはずだった家族13人の幸せも奪った。そのことを真剣に自覚してほしい」と訴えた。(藤木祥平)