沖縄県・宮古島周辺で陸上自衛隊のヘリコプターが消息を絶った事故で、陸自から委託を受けた民間作業船が2日、海底に沈んでいた機体の主要部分を引き揚げた。機体からはフライトレコーダー(飛行記録装置)を回収した。陸自は今後、詳しく分析して事故原因の究明を進める。
陸自によると、機体の主要な部分はほぼ引き揚げたという。操縦席や胴体部分、尾翼部、機体上部の外付け燃料タンクなど全体がつながった状態で、複数箇所が折れたり割れたりして大きく損壊していた。行方不明者の新たな手がかりは見つからなかった。
引き揚げ作業は午前8時ごろに始まり、同11時45分ごろに作業船のクレーンが機体を包んだ網を引き揚げ、甲板に載せた。機体後部の側面にある日の丸のマークや燃料タンクが確認されたが、機体は原形をとどめていなかった。陸自は、事故機が所属していた高遊原(たかゆうばる)分屯地(熊本県益城町)に機体を移送して調べる。
防衛省関係者によると、フライトレコーダーは胴体部の後方に設置されていた。事故直前の飛行高度や速度、機内の音声などが記録されている可能性があり、陸自が解析を進める。解析には数カ月程度かかるという。フライトレコーダーは回収後、機体とは別のルートで移送された。
引き揚げ作業では、1日に遠隔操作型無人潜水機(ROV)を海中に投入し、大型の網の上に機体を移動。2日に再びROVを投入し、網で機体を包んでからワイヤを巻いて引き揚げた。海底に散らばっていた他の部品は容器に収納し、機体の引き揚げ後に回収した。3日もROVを投入して捜索や回収を続ける。
引き揚げの現場は、宮古島の西方にある伊良部島の北約6キロ、水深約106メートルの海底。機体の胴体部分のほか、残骸が複数見つかっていた。機体の周辺ではこれまでに6人の遺体が収容され、うち5人は隊員と確認された。自衛隊は残る1人の身元確認を進めるとともに、行方不明となっている4人の捜索を続ける。
ヘリには陸自第8師団の坂本雄一・前師団長(55)ら10人が搭乗。4月6日午後3時46分に宮古島を離陸し、10分後に洋上でレーダーから機影が消えた。機体が見つかった海底は、レーダー消失地点から北側に約4キロ離れている。【内橋寿明】