“LGBT”で揺れた自民 公明党の“圧”とG7

「安倍さんに申し訳ない」
LGBTなど性的マイノリティーへの理解を増進するための議員立法の修正案が16日、自民党総務会で正式に了承された。
修正案は、2年前の2021年に超党派議連などが合意したものの提出が見送られた法案に書かれた文言を一部変更して作成されたものだ。
2年前の法案には「差別は許されない」との文言があったが、「禁止事項との解釈をされた場合、例えば自分が女性だと主張する男性が女湯に入ることができなかった場合に訴訟に発展するおそれがある」などの反対論が党内から相次いだ。
その結果、「不当な差別はあってはならない」との文言に変更されたが、この表現はもともと、安倍元首相が総理大臣在任中に国会で答弁した表現だ。
安倍元首相は2年前の法案に対して慎重な姿勢を示しており、今の党内の反対派は安倍元首相に近かった保守系の議員が多い。修正した文言には、そうした議員らの理解を得る目的も透けて見える。
さらに「性自認」の文言も「性同一性」に変更された。
「『性自認』を理由に、男性が女性だと偽って女性用トイレに入るなど悪用されるおそれがある」などとの指摘があり、より客観的な表現として「性同一性」に改めたものだ。
自民党の遠藤利明総務会長は16日の総務会後、記者会見で「全会一致で了承いただいた」と語ったが、なお党内の不満はくすぶっている。
総務会に出席していた反対派の自民党・安倍派の高鳥修一衆議院議員は、「本当は了承されていない。反対多数にもかかわらず了承をとったことを前提としているので、極めて不正常な運営だ」と憤った。
その上で、了承されたことについて力なくこう語った。
「自分の師であった安倍さんに申し訳ない」
公明党の“圧”と迫るG7
そもそもこの法案の議論が進んだきっかけは、今年2月に更迭された元首相秘書官の同性婚への差別的な発言だった。
これを受けて、G7広島サミットの前までの法案成立を求める声が上がった。
「日本はG7の中でも性的マイノリティーに関する法整備が遅れている」などとの指摘が与野党から相次ぎ、議長国としてジェンダー平等への取り組みを示すべきだとの意見が出た。
一方で、自民党内からは保守系議員を中心に「本当に必要なのか」などと法案の提出自体に否定的な意見も多く、とりまとめに向けては難航が予想された。
そんな中、自民党を強く牽制したのが与党・公明党の山口那津男代表だ。
3月の記者会見では「自民党が後ろ向きな姿勢で、日本が議長国を務めることは恥ずかしい」と述べ、真顔で“圧”をかけた。
さらに、4月の統一地方選挙と衆参の補欠選挙の最中、「世論を二分する」(自民ベテラン議員)などとして自民党が法案についての議論をしなかったことについても、「(自民党には)党内合意をつくる暇(いとま)がないのかもしれないが世論や各界の求めなど、もう環境は十分整っている」皮肉交じりに語っている。
その後も山口氏はたびたび法案の話を持ち出しては、「G7前に積極的な姿勢を示すべきだ」と自民党に要求を繰り返してきた。
4勝1敗という結果だった衆参5つの補選では「公明党の支援がなければ1勝4敗だった」との声も出る中で、公明党の意見は無視できない。
実際に選挙後は、選挙区調整などをめぐる公明党の強気の姿勢がさらに増している。
G7議長国としての国際的なメンツを保つことに加え、連立を組む公明党の姿勢を踏まえれば、G7前の法案提出は“避けては通れない道”だったと言える。