外国人の送還や収容のルールを見直す入管難民法改正案が9日、参院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主などの賛成多数により可決、成立した。不法滞在などで強制退去を命じられても本国への送還を拒む外国人の長期収容を解消するのが狙い。
出入国在留管理庁によると、強制退去処分が出た外国人のうち本国への送還を拒んでいるのは令和3年末時点で3224人。その約半数は難民認定の申請中で、入管法の規定で送還が停止されていた。入管庁は、難民に該当しないのに規定を悪用・誤用する例が含まれているとみている。
改正入管法では、難民認定申請中でも送還が停止される申請回数を2回に限定し、3回目以降の申請は相当の理由を示さなければ送還できるようにする。これまで原則、施設に収容してきた不法滞在者に対し、支援者などの「監理人」をつけることを条件に施設外で生活を認める「監理措置」制度も創設する。
施設に収容した場合は収容期間に上限は設けず、収容の必要性を3カ月ごとに見直す。送還を拒み、航空機内で暴れるなどの行為は刑事罰の対象とする。
戦争からの避難者など、条約上の難民には当たらず法相の裁量で保護していた外国人に対し、「補完的保護対象者」として就労できる定住資格を与える制度も新設する。
与野党協議では難民を認定する第三者機関設置の検討を付則に盛り込んだ案も検討されたが、協議は決裂し付則は盛り込まれず、成立した改正入管法は政府案の微修正にとどまった。
政府は3年の通常国会に旧改正案を提出。名古屋出入国在留管理局で同3月、スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した問題を巡り与野党が対立し、廃案となっていた。