養護施設で「男女別の寮を撤廃」の誤情報、市議のSNSで拡散…「性被害の温床」と批判広がる

子どもの虐待や貧困などに対応して設置されている埼玉県内の児童養護施設で、「性の多様性の取り組みの一環として、男子寮と女子寮が撤廃された」とする誤った情報が7日、SNSで拡散した。「性被害の温床になる」などと批判が広がり、県には8日までに苦情の電話が複数寄せられた。県は「(男女別を)撤廃した施設は一つもない」と全面的に否定している。誤情報が拡散したきっかけは1本の投稿だった。
7日午前、X(旧ツイッター)で富士見市議の加賀奈々恵氏(32)は「男子寮・女子寮の撤廃がなされたとの事実が確認された」「性の問題が発生しているとの報告もある」などと書き込んだ。前日の県議会決算特別委員会で、児童養護施設での性の多様性への配慮についてやりとりがあり、県こども安全課が男女共用スペースに「メリットもある」と答弁したことを捉えたものだった。
ところが、担当の県幹部は「入所児童の状況に応じ、きめ細かな対応が望ましい」と述べており、「メリット」として紹介していたのは、きょうだいでの入所や、性自認が戸籍上の性別と異なる子どもなどのケースだった。
県内の児童養護施設は県立3、さいたま市立1、民間18の計22施設ある。県によると、児童福祉法などに基づき、県は民間施設に対しても運営法人の監督・指導を担うが、寮の運営方法を指導する権限はない。
ただ、今回の騒動を受けて県が全施設に確認したところ、性の多様性の観点から男女共用の寮を設けた施設はなかったという。これらの中には、寝室以外で男女共用の食堂やリビングを設けている所が8施設あるが、小規模で家族的な養育をするといった目的があり、性の多様性とは関係のないものだった。
加賀氏は外部から指摘を受け、8日までに内容を変更した数回の投稿で「一部の施設で撤廃されたという情報をもとに(質疑があった)」などとした。読売新聞の7日の取材には「(男女別の撤廃が)女子児童にリスクがあるという問題意識は変わらない」と語った。