ニュース裏表 平井文夫 「増税メガネ」と呼ぶ人こそ〝財務省の思うつぼ〟 「岸田イジメ」いつまで続く? 防衛力強化に賛成も増税はイヤ…虫のいい話

最近は内閣支持率が下がっても、「あっ、そう?」とあまり驚かなくなってしまった。週末の世論調査では、共同通信が4ポイント減の28・3%、TBS系JNNが10・5ポイント減の29・1%で、いずれも過去最低、かつ20%台の「危険水域」に入った。
国民は政府の経済対策を評価しておらず、岸田文雄首相が打ち出した所得税減税については「ショボいし、遅い」と散々な評価だ。
今回の共同調査で面白かったのは、「経済対策を評価しない」理由のトップが「今後、増税が予定されているから」で、40・4%にも上ったことだ。
そういえば、テレビで「今後こんな増税があります」というのをパネルに一覧で出して説明しているのを何度か見た。だから、岸田首相は「増税メガネ」というニックネームをつけられてしまい、国会でもからかわれていたのはちょっとかわいそうだった。
これに対して、岸田首相が「どんな呼ばれ方をしてもかまわない。やるべきだと信じることをやる」と答えたことに筆者は感心したが、ネット上では「開き直りだ」という批判が飛び交い、「岸田イジメ」は手がつけられない感じだ。
だが、本当に「今後、増税が予定されている」のか。真っ先に挙がるのが「防衛増税」だが、このうち一般国民に直接関係する所得税については、今払っている「復興増税」から「借りてくる」ため、実質増税が始まるのは14年も後だ。
そのとき、78歳の筆者はもう所得税はほぼ払っていない。つまり関係ない。現在50歳以上の人にはほとんど関係ない増税だ。そもそも、「防衛力の強化」には賛成しているのに増税はイヤ、というのも虫のいい話だ。
だからこれをもって、「今後、増税が予定されている」から、「岸田は増税メガネだ」とイジメるのは、あまりフェアではないと思うのだ。
こんなことを書くと、「お前は財務省のポチか」とすぐに叱られるのだが、筆者は別にポチではない。事実を書いているだけだ。
むしろ、われわれがもっと問題にすべきは少子化対策の財源として検討されている「社会保険料の値上げ」だと思う。先週も書いたが、サラリーマンの社会保険料は企業負担分も含めると明らかに「払い過ぎ」だ。
しかも健康保険料の半分近くが後期高齢者医療や国保(自営業者用)に回されている。特に、後期高齢者医療については、1割負担でいいのかという問題以外にも、延命治療や「透析」などの高額治療の保険適用の是非など検討すべき問題は山積している。
こういう重要な「事実」を放っておいて、ただ岸田首相を「増税メガネ」と呼んでイジメている人たちこそ「国家権力の思うつぼ」、すなわち「財務省のポチ」と言われても仕方ないと思うのだ。 (フジテレビ上席解説委員・平井文夫)