《埼玉本庄5歳児虐待死》内縁夫の浮気も赤裸々に曝露…懲役15年を求刑された“主犯”石井陽子の呆れた言い分「犯行の瞬間は麻雀中」「5歳児は保育園で赤ちゃんを蹴った」「遺体を埋めようと提案したのは実母」

〈 《埼玉本庄5歳児虐待死》理想の夫婦は「籠池夫妻」“魔女”石井陽子に狂った内縁夫の「逮捕当日プロポーズ」「チェーンソー奇襲未遂」 〉から続く
2022年1月、埼玉県本庄市の一軒家で、柿本歩夢くん(当時5)が虐待を受けて命を落とし、遺体を床下の土中に埋められていた事件。傷害致死、死体遺棄などの罪に問われたのは、実母の柿本知香(32)、無職の丹羽洋樹(36)と内縁の妻・石井陽子(56)の3被告。今年9月、知香は懲役10年、丹羽が同12年の有罪判決を受けた(ともに控訴)。2人は、躾と称して犯行を主導したのは石井だったと主張していた。
11月16日、その石井の裁判員裁判がさいたま地裁で結審した。検察側は「被告の指示が全ての発端。主導的な立場にあり、最も重い責任を負う」として、懲役15年を求刑した。
遡って11月13日と14日の被告人質問。証言台の椅子に座った石井は、知香や丹羽に主要な責任を押しつけ、犠牲者の歩夢くんでさえ“問題児”だったと主張していた――。
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SNSの「mixi」を通じて知り合い、交際に発展
柿本母子を家に住まわせていた石井と丹羽は、逮捕時まで、約10年間の内縁関係を続けていた。
「風変わりで、底抜けに明るく、よくも悪くも図々しい。今まで会ったことのないタイプでした。自分にはない魅力を持っていたので、惹かれました」(石井の証言)
石井がSNSの「mixi」を通じて丹羽と知り合ったのは、彼が都内の私大生だった20歳の時。丹羽が社会人になってから対面を果たし、交際に発展するが、半年ほどして「丹羽が暴力的な一面を見せ始めた」と石井は主張。
「些細なこと、普通の人ならケンカにもならないような原因で、すぐに怒り出し、暴言を吐き、暴れるようになりました。モノを投げつけたり、突き飛ばしたり、テーブルをひっくり返したり、家の中が、嵐が来たような状態になりました」(石井)
丹羽の浮気が発覚
それでも丹羽と別れなかったことについては、こう言って声を詰まらせるのだ。
「丹羽は子供の頃から母親を憎悪していました。実家とは反りが合わず、帰るところがない。友達はいましたが、本当の姿を見せられるような、腹を割って話せる友人はいませんでした。私が見捨てたら、彼は独りぼっちになってしまう。私だけは、そばにいてあげようと思っていました」(石井)
ところが、歩夢くんが死亡する約半年前――2021年の夏、丹羽の浮気が発覚する。法廷で丹羽も認めたこの不実は、石井の精神状態に大きな影響を与えたという。
「私たちが車で家に帰ってくると、家の前に相手の女の人が立っていました。それを見て丹羽は『マジ来やがった』『もう終わった』と言いました。私はその人と話をして、丹羽との関係を知りました。性的描写も聞かされました。丹羽は『申し訳ない』と謝り、『相手とは遊びで、別れるつもりだった』『もう絶対しない、愛しているのはお前だけだ。信じてほしい』という言葉を聞いて、一応は許しました」(石井)
名前は偽名、年齢は20歳も下にサバ読みしていた
その延長で起きたのが、前回触れた丹羽の “チェーンソー騒動”だ。
「ただ、相手の女性は1人や2人じゃありませんでした。きつめの口論になり、丹羽は最初の女の人さえ家に来なければバレなかったのにと言って、『殺してやる!』とチェーンソーを持ち出したことがありました。その時は私と知香で止めました。コロナの前から、疑わしいことは何度もありました。仕事の長続きしない丹羽が、派遣登録したアルバイトで、やれ休日出勤だ、残業だと言って出かけていくのを見て、仕事をがんばっているんだと信じていました。でも、それは女と遊ぶためでした」(石井)
以後、石井は「心のダメージが大きく、頭が回らない状態になっていた」と訴える。
「信じていたものが全て嘘だったんだと、ショックを受けました」(石井)
付言しておくと、先だって石井の裁判に証人出廷した丹羽も、同様のセリフを吐いている。石井は逮捕されるまで、名前を「ナカムラアオイ」と偽り、年齢を20歳も下にサバ読みして、丹羽と交際を続けていたのだ。
「今までの10年間、交際期間に(石井が)言ってきた言葉は、全て嘘だったということです」(11月10日・丹羽の証言)
石井と知香の食い違う証言
前後して、そんな2人の暮らす家に流れ着いたのが、大阪から駆け落ち同然で本庄の男性に嫁いだ知香と、一人息子の歩夢くんだった。2020年7月、夫のDVから逃げ出した知香は、歩夢くんを連れて保育園のママ友だったX子さんのアパートに身を寄せる。X子さん宅の近隣に住んでいたのが、石井と丹羽。双子を育てるシングルマザーだったX子さんは当時、石井たちと親しい間柄にあり、その輪に知香も加わった。だが――。
「ママ友というだけで一緒に生活を始め、やがてX子さんと知香がお互いに不平不満を持つようになりました。私はそれぞれから愚痴を聞かされ、板挟みになって辛い時期がありました。2022年1月のはじめ、2人が怒鳴り合いの大喧嘩をし、X子さんが『すぐに出て行ってほしい』、知香も『X子が歩夢を邪険にする』と。実家とも縁を切っている知香は行く場所がなく、『家においてくれないか』と頼まれて、仕方なく我が家に住まわせることにしたんです」(石井)
だが、知香の法廷証言によれば、石井から「X子が歩夢の悪口を言っている」「X子を信じるな」と言われたといい、彼女と仲違いした際、「うちに来たらいい」と誘ってきたのは、石井の方だったという。派遣社員として工場で働いていた知香は、給料が振り込まれる銀行口座のキャッシュカードや通帳を石井に預ける一方、丹羽の添削で同居にあたっての「誓約書」を作成。2021年1月11日から事件の現場となった家で同居を始めた。
寄る辺ない柿本母子は居候の身、石井らとは決して対等な関係ではなかった。それは歩夢くんにとって“生き地獄”の始まりだった。
石井は「怪我をさせるよう指示をしていない」と否認
歩夢くんに対する暴行は、引っ越した直後から始まった。本庄の家では、丹羽が設置した飼い猫用のペットカメラに、大人たちによる犯行場面が数多く記録されていた。そのうち、歩夢くんの胸倉を掴んで頬を平手打ちする(2021年1月)、頭部や顔面を足で蹴る(同3月)、ハエ叩きで頭を何度も叩く(同3月)といった事件は、石井の単独犯行だ。
証拠映像が存在し、それらを認めた石井は、こう証言する。
「X子さんの家にいる時から、歩夢くんは他の子に比べて、粗暴なところがあると聞いていました。保育園でも弱い者イジメをして手を焼いていると。我が家で暮らし始めてからすぐくらいに、歩夢くんが保育園で生後数か月の赤ちゃんを蹴っ飛ばしたり、踏んづけたりしていると聞いたので、厳しくしないといけないと思いました。それが(暴行の)ベースにありました。私より前に、知香が歩夢くんに手を上げていましたし、私や知香が怒る分には、歩夢くんに怪我をさせることもないと思っていました」
だが、保育園の保育記録によると、歩夢くんに落ち着きや集中力がなく、他の園児に手を出すような行動が目立ち始めたのは、本庄の家で同居を始めた時期以降だという。
傷害致死、死体遺棄、暴行、監禁、詐欺など12の事件で罪に問われた石井は、傷害致死のみ「一切手を出してない」「怪我をさせるよう指示をしていない」と否認。石井が傷害致死の責任を負うかどうかが、この裁判の最大の争点となっている。
被告人質問で初めて登場した“新証言”
歩夢くんが死亡したのは、証拠映像や音声のない2022年1月18日――。当日午後、歩夢くんは家で食事中にお漏らししたとして、石井と丹羽に叱られていた。石井は仕事中の知香にしつこく電話をして職場を早退させると、現場となる1階8畳の和室に、4人が揃った。石井の証言はこうだ。
「お漏らしのあと、丹羽が強めに怒っていて、歩夢くんに冷たいシャワーを浴びせたりしていたので、丹羽に怒るのをやめてほしくて、母親の知香に戻ってもらいました。帰宅した知香は、歩夢くんをいつものように叱り始めました。私は以前から丹羽に麻雀を覚えるように言われていて、その時は、テーブルで麻雀の牌やルールを覚えることに集中していました。目の前にいた丹羽が、歩夢くんのところに行った記憶はありません。気づいたら丹羽が歩夢くんの体を投げて、歩夢くんは立ち上がらず、意識を失っているように見えました。呆然としました」(石井)
8畳間の同じ空間にいながら、石井は麻雀を覚える作業に没頭していたため、指示も出していないし、止める暇もなかったというのだ。これは「記憶が整理できてきて、後から思い出した」という、被告人質問で初めて登場した“新証言”だった。
「その前後、丹羽は歩夢くんに麻雀の牌の絵を描かせていたのですが、うまく描けていなくて、イライラしていました」(石井)
夫に歩夢くんの遺体を取られることを懸念し、床下に埋葬
一方で、知香と丹羽は、暴行の発端として、石井から歩夢くんと「相撲」を取るよう指示があったと証言。「相撲」とは、その2日前の16日にも、就寝の挨拶をしなかった歩夢くんに知香が行った体罰で、「お相撲の時間かな、お母さん」と指示したのが石井だった。18日は、丹羽も石井から「洋樹さんも相撲を取ったら?」と言われ、知香と交代後に2度、歩夢くんを畳の上に叩き落としたところ、立ち上がらなくなったという。
虐待の発覚を恐れた3人の大人は、誰一人救急車を呼ぼうとせず、歩夢くんは知香の腕の中で息絶えた。知香の証言によると、石井はその後、歩夢くんの死が発覚すれば、遺体は夫の元に引き渡されると示唆。「畳の下に土がある」と、埋葬して隠すことを提案したという。一方で石井はこう主張した。
「歩夢くんを手元に置いておきたい知香は、まだ夫と離婚が成立していなかったので『出頭したら夫に遺体を取られるから、庭に埋めたい』と言い出しました。私は『人の目もあるし、外の庭には埋められない』と話すと、知香が『じゃあ、家のどこかに埋めることはできないか』と。そこで私か丹羽が『家の床下しかないよね』と言って、知香が同意したんです。母親としての気持ちに共感し、寄り添ったつもりでした」(石井)
「まさかこんなに早く警察が来るとは思わなかった」
石井は「逃げ切れるなんて思ってないです」と語気を強め、知香の離婚が成立するのを待ち、自分や丹羽も身辺整理をしてから「3人で出頭するつもりだった」と語った。しかし、埼玉県警が動き出すまで、彼女らがそうした行動を起こした様子はなかった。
「まず精神状態を整えるのに精一杯でした。まさかこんなに早く警察が来るとは思わなかったので、何もできていない状況でした」
石井は、居候していたシングルマザーの知香や歩夢くんのことを「家族だと思っていました」と語った一方、家で飼っていた猫たちについても「人間と同じ大事な家族、我が子でした」と言い切っている。だが、歩夢くんが受けてきたのは、動物以下の惨たらしい仕打ちだった。
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)