大阪入管で2017年に、約14時間半も“後ろ手錠”をされたまま放置され、職員らから強い制圧行為を受けたのは、「必要最小限の範囲を明らかに超えた違法な公権力行使で、拷問だった」として、ペルー国籍の男性が国に賠償を求めていた裁判。大阪地裁は4月16日、国に11万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
地裁は、“長時間にわたり漫然と手錠をかけ続けた点”を違法と判断しましたが、後ろ手に手錠をかけた点の違法性は認定しませんでした。原告側が主張していた、制圧行為とケガとの因果関係も認めませんでした。
◆約14時間半も「後ろ手錠」で放置 40分以上押さえつけられる場面も…
判決によりますと、日系ペルー人のブルゴス・フジイさん(病気で死去)は、大阪出入国在留管理局(大阪市住之江区)に収容されていた2017年12月、食事の内容に抗議するなどした結果、保護室に入れられ、約14時間半にわたり後ろ手に手錠をかけられたまま放置されました。
入管職員らはブルゴスさんが眠っていた際にも入室し、手錠の状況を確認。
さらにブルゴスさんが扉を蹴った際には、職員複数人にうつ伏せにされ、顔・両腕・両足を強く押さえつけられました。ブルゴスさんは「痛い」「助けて」と叫びましたが、押さえつけは40分以上続きました。
一連の措置の後、ブルゴスさんは左上腕部の骨にヒビが入るなどのケガをしていたことが判明しました。
◆「拷問だ」国に賠償を求め提訴
ブルゴスさんは2020年2月、
▽職員に対し抗議の言葉は述べたが、暴行を加えたことはなく、逃亡の現実的恐れも全くなかったので、手錠をかけたこと自体が違法である。ましてや、後ろ手錠で14時間半以上の極めて長時間放置したことは、肉体的・精神的に苛酷な苦痛を与える行為で、拷問にあたる
▽うつ伏せにさせて強く押さえつけるなどした行為は、必要最小限の制止・抑止の範囲を明らかに越えている
として、慰謝料など216万円の賠償を求めて、国を提訴。
国側は、▽原告側が反抗的な態度を取るなど、長時間の手錠使用継続の必要性・相当性がある状況があった ▽制圧行為も過剰な有形力の行使ではないとして、請求棄却を求めていました。
◆“漫然と手錠をかけ続けた点”のみ違法と判断 11万円の賠償命令
大阪地裁(堀部亮一裁判長)は4月16日、11万円をブルゴスさんに賠償するよう国に命じる判決を言い渡しました。
地裁は、“手錠をかけてから8時間を超えていたのに、継続の是非を組織的に判断せず、その後も6時間にわたり漫然と手錠をかけ続けた点”のみを違法と断じました。
前ではなく“後ろ手”に手錠をかけた点については、「両手を前に動かすことができる前手錠では十分な制止ができないと判断したことに、裁量権の逸脱や濫用はなかったというべき」と判断。
40分以上の押さえつけについても、「ブルゴスさんの興奮状態が続いていたためと推認される」と指摘し、違法性はなかったとしました。また、「扉や壁に自らぶつかっていた場面もある」などとして、一連の強い制圧行為とブルゴスさんのケガの因果関係も、認定しませんでした。