津波で不明の6歳女児「なっちゃん、ママとパパのもとに帰れたね」…100キロ先で遺骨見つかる

14年7か月捜し続け「あきらめていたところに…大変うれしい」

東日本大震災で津波にのまれ、行方不明となっていた岩手県山田町の山根捺星(なつせ)ちゃん(当時6歳)の遺骨の一部が、100キロほど離れた宮城県南三陸町志津川で見つかった。宮城県警が9日、鑑定による身元の特定を発表した。14年7か月にわたって娘を捜し続けた家族は「発見してくださった方々に大変感謝しています」とコメントした。(東北総局 徳山喜翔、釜石支局 押尾郁弥)
発表によると、遺骨は下あごの一部。南三陸町や隣接する気仙沼市の海岸などをボランティアで清掃していた工事業者が、2023年2月に収集物の中から発見し、警察へ届け出ていた。
宮城県警は東北大学などの協力を得て、母系の血縁関係を特定するミトコンドリアDNA型鑑定と、歯の表面から採取した微量のたんぱく質の解析などを進めた。その結果、今年9月24日に身元を特定できたという。
遺骨は近く、両親に引き渡される。身元判明の報告を受けて、家族は宮城県警を通し「ボランティアで清掃してくださった方々、収集物から発見してくださった方々、調査をしていただいた警察の方々に大変感謝しています。あきらめていたところに連絡をいただき驚きましたが、大変うれしいです」と談話を出した。

震災当日、捺星ちゃんは祖母と2人で自宅にいたところを津波に襲われた。逃げようとしたが、玄関先に迫った水を怖がり、家の中に引き返して流された。祖母は奇跡的に助かった。
被災直後、捺星ちゃんが通う山田町の保育所の卒園式では、代理として母(49)が保育証書を受け取った。見つからないまま時間だけが経過し、24年の追悼式で、母は20歳を迎えるはずだった娘を思って花を手向けたが、「私の中では6歳で止まっている」と語っていた。
捺星ちゃんは、おままごとやブロック遊びが大好きだった。遊戯会では元気いっぱいに踊っていた。給食の「おいなりさん」を楽しみにしていた。
当時を知る保育士の女性(50)は「写真を見る度、早く見つかってほしいと思っていた。『なっちゃん、ママとパパのもとに帰れてよかったね』と声をかけてあげたい」と感無量の様子で話した。
行方不明者数は2519人に

警察庁によると、依然として2519人が行方不明となっている。不明者の身元が特定されたのは、23年以来という。