【独走スクーフ】北海道・青森・岐阜・岡山で5連続放火! 1.3億円保険金詐取クルーフの“卑劣な犯行の手口”「ただの火事じゃないなと…」

2025年11月12日、道警は3人の男を逮捕した。彼らは全国で放火による保険金詐取を繰り返してきた“犯行グループ”だ。だが報じられていない事件がある。4月、富良野の火災現場で見つかった焼死体は彼らの仲間だったのだ。(全2回の1回目/ 続きを 読む)
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保険金詐取を繰り返す連続放火“犯罪グループ”の存在
広大な北海道の中央に位置する上富良野町。日本のラベンダー発祥の地として知られる風光明媚なこの街の一角で、アパート1棟が丸々焼き尽くされる大規模な火災が発生した。
「火の手が上がったのは、2025年4月3日の午前3時過ぎ。築40年を超える古びた2階建てアパートの1室から出火し、焼け跡から性別不明の遺体が発見された」(消防関係者)
後にこの焼死体は、都内に住む無職の岡崎義和(享年72)と判明した。
近隣住民が言う。
「新聞配達に起こされて火事に気付いた。現場検証に刑事が何日もいましたね」
アパートの管理をしていた会社の担当者も言う。
「火事の後、何度も北海道警の刑事さんが会社に訪ねて来ました。しかも、名刺を見たら殺人や放火を担当する捜査一課。ただの火事じゃないなと察しました」
目下、北海道警が捜査を続けている上富良野町のアパート火災。その背後には、全国で保険金詐取を繰り返す連続放火“犯罪グループ”の存在があった――。

11月12日、北海道警が3人の男を非現住建造物等放火の容疑で逮捕した。
社会部記者が解説する。
「容疑は22年8月26日の未明、北海道紋別市のビルと倉庫に火を付け、一部を焼損させたというもの。出火当時、ビルは内装工事中で人はいませんでしたが、警察は保険金目的の放火の疑いで捜査を進めています」
逮捕されたのは、いずれも住所不定・無職の稲葉寛容疑者(57)と深町優将(まさのぶ)容疑者(54)。そして北海道旭川市の自称会社役員・青山篤容疑者(65)だった。
実は、この3人のうち稲葉と深町の2人は、今回の逮捕が初めてではない。
「2人の容疑者は青森、岐阜、岡山の3県の住宅に放火し、保険金をだまし取った詐欺などの罪で既に起訴されているのです」(同前)
紋別の物件にも多額の保険金がかけられていた。
稲葉の知人が明かす。
「あの物件には保険会社3社で計2億円程の保険金がかけられており、そのうちの1社から約5000万円が稲葉側に振り込まれている」
脱税で人生暗転した稲葉と、火災保険調査を担う“業界のエース”深町
全国で放火と詐欺を繰り返してきた稲葉と深町とは、一体どんな人物なのか。
1968年、稲葉は静岡県伊東市で生まれた。高校を卒業後、地元の不動産会社に就職した稲葉は、数年後に親族が代表を務める不動産会社に転職。30代前半で社長を任されていた。
若手社長として順風満帆な人生を送っていたはずが、
「2003年、3年間にわたって約9000万円を脱税していた容疑で在宅起訴。翌年、懲役1年6カ月(執行猶予4年)の判決を受け、人生が暗転しました」(地元の不動産関係者)
18年には“伊豆のドン”と言われた佃弘巳・元伊東市長らが逮捕された贈収賄事件に絡み、稲葉も収賄幇助容疑で逮捕されている。
「この事件でも懲役1年(執行猶予3年)の判決が東京地裁で下されており、地元では悪評ばかりが流れるようになった」(同前)
いっぽうの深町は1971年生まれ。保険調査会社大手「損害保険リサーチ」に2023年まで調査員として在籍していた。
保険業界関係者が語る。
「深町は精鋭揃いと言われる東京本社の調査部門に長く在籍し、火災保険調査を主に担っていました。社内で若手に調査手法を指導することもあり、“業界のエース”と呼ぶ声もあった」
2人がタッグを組み、全国各地で放火による保険金詐欺事件を起こしていったのだ。捜査関係者が言う。
「稲葉が手ごろな古民家物件を探し出し、深町が火災の偽装を指南しつつ実際に火もつけていた。アシが付くのを避けるため2人は物件の所有者にならず、その都度“協力者”を変えて犯行を繰り返していたようだ」
2人の犯行手口は一体どのようなものだったのか。
最初に起きた火災は22年8月4日。ターゲットになったのは、岐阜県飛騨市の山間部にある、延べ床面積306平方メートルの木造2階建て家屋だった。
「火事が起きる3カ月程前、稲葉は11歳上の腹違いの兄であるA氏名義で物件を取得。約200万円で購入し、すぐさま建物と家財に限度額6500万円の共済をかけました」(前出・記者)
物件購入後の“偽装工作”
購入後、しばらくは実際に居住するかのような“偽装工作”を近隣に対しておこなっていた。
近隣住民が回想する。
「Aさんは、『夏ぐらいからここに住む予定です』と言って挨拶に来ました。自分で壁のペンキを塗り直したり、私の息子夫婦の家が近所に建ったときには、新築祝いで静岡の魚の干物を持ってきてくれました」
火事発生の2カ月程前には地元業者に、リフォーム工事の依頼までしていた。
工事を請け負った業者が述懐する。
「古い床の上から新しい床を貼るという3、4日で終わる簡単な工事でした。7月頭に見積もりを出したのに、Aさんから『工事は8月1日以降にしてくれ』と言われたので、8月頭から工事を始めたんです。で、残り1日で工事は終わる予定だったんですが……」
そのタイミングで火災が発生したのである。
この業者は工事前後のAの言動に不審さを感じていたという。
「短期間で終わる工事なのに急に『静岡に帰る』と言って、私に鍵を預けて帰ってしまったんです。その上、火事が起きた後、『家のブレーカーを切って作業していたら火事にならなかったんじゃないか』などと言いがかりをつけて、火事の責任を私に押し付けようとしてきたんです」
結局、この火事は“原因不明”として処理がなされ、同じ年の10月、Aの口座に共済金が振り込まれた。
その金額は、見舞金や片付け費用などを合わせて約7300万円。いとも簡単に共済金が支払われてしまったのである。
前出の記者が言う。
「味を占めた稲葉らは、僅か22日後に紋別でも火事を起こし、5000万円の保険金を詐取しています」
この火事が、今月12日に逮捕された前述の事件だ。
2件あわせて1億2000万円余を荒稼ぎした、1年2カ月後――。3件目の火災が23年10月29日に岡山県美咲町で発生する。
「狙われたのは築100年を超える延べ床面積326平方メートルの古民家でした。稲葉の手下と思しき20代のB氏が突然『買いたい』と仲介の不動産屋に現れた。ところが、契約直前になってなぜかB氏の友人であるC氏が登場。結局、22年6月にC氏が自分の名義で65万円程を支払ったのです」(同前)
しばらくすると岐阜の物件と同様、稲葉の兄であるAが住み始めたという。
物件の管理を任されていた不動産業者が言う。
「息子のCとB君は幼馴染」
「テレビの映りが悪いと言うのでアンテナを修理しに行ったり、そのお礼として食事を奢ってもらったりもした。ある日突然いなくなり、その後はBさんが住み始めました。ところが、彼が東京に戻っている際に“たまたま”火事が起きてしまったのです」
稲葉とBやCは、どんな関係だったのか。物件の所有者になっているCの母はこう説明する。
「息子のCとB君は幼馴染なんです。B君は息子に『古い家を買って、半年か1年くらい住んで売る仕事をしている』と説明し、無知なCがそれに応じて物件を買ってしまったようです。火事が起きた際、息子がB君に連絡したら『警察には何も言うな』と指示を受けたのですが、息子はすべてを警察に話し、嫌疑不十分で不起訴になりました」
そして、稲葉との関係についてはこう語る。
「息子がB君に聞いたところ『喫茶店にいるとき、突然声をかけられて出会った』と言っていました。息子も稲葉と会ったことは1回しかないそうです」(同前)
稲葉らは共済団体に約4900万円を請求していた。だが、共済団体が不審に思ったことで、岡山の物件に関しては共済金が支払われていない。
(文中敬称略)
〈 「現場で見つかった焼死体は…」5連続放火で1.3億円を詐取、事件直前の“SOSの電話”と保険金詐取グループの正体 〉へ続く
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年11月27日号)