iPS細胞からつくった心筋細胞シート「リハート」を重い心臓病の患者に保険適用で移植する手術が29日、大阪けいさつ病院で実施されました。
京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞を製作してから20年。iPS細胞からつくられた再生医療製品が国の承認を経て実用化され、保険適用で手術が実施されるのは世界初となります。
大阪けいさつ病院によりますと、手術を受けたのは神奈川県在住の女性(50代)で、虚血性心筋症による重症心不全の患者です。
手術は体の左側の肋骨の間を開胸し、iPS細胞からつくった心筋細胞あわせて1億個をシート状に加工した「リハート」を3枚にして心臓の表面に直接貼り付けて移植するものです。
29日午前11時16分から始まり、午後0時8分に終了しました。術後の患者の状態は順調だということです。
「リハート」は大阪大学発のベンチャー企業クオリプスが開発。厚生労働省は今年3月、再生医療等製品として条件・期限付きで製造販売を承認しました。公的医療保険の適用対象となり、公定価格は5320万円で、高額療養費制度を利用すれば患者の自己負担は一定の額に抑えられるということです。
現状は仮承認のような状態であるため、今後、クオリプスは、本承認を得るために2033年までに75人を目標にリハートを使った手術を行い、心臓の機能の変化などを詳しく調べ、有効性を検証する必要があります。今回の手術はその75人のうちの1例目となりました。
リハートの開発を主導し、今回の手術を実施した大阪けいさつ病院の総長で大阪大学の澤芳樹名誉教授によりますと、本承認に向けて今後も同様の手術を約20の医療機関で実施する計画で、現時点で約8例の手術が予定されているといいます。澤名誉教授は日本テレビの取材に「慎重にデータを解析し証拠を出していかないと世界に通ずる医療にはならない」「世界の患者さんにこの治療が普及されるよう最大限の努力をしていく」と話しました。
京都大学の山中伸弥教授の研究グループが2006年にiPS細胞を作製してから20年。iPS細胞の製品が「研究」「治験」から「治療」へ。澤名誉教授によりますと、心筋細胞シートを普及させ産業化するために、現在手作業で行っている細胞培養を機械で自動化し、量産できる体制づくりも目指しているということです。