千葉県を中心に大規模停電をもたらした台風15号の上陸から16日で1週間を迎えた。停電や断水が続く県内の被災地はこの日、激しい雨に見舞われ、住民の疲労はさらに深刻さを増している。高波の被害を受けた横浜市や、多くの家屋に被害が出た東京・伊豆諸島の一部でも復旧が見通せない状態が続いている。
千葉県
激しい雨のために16日、土砂災害警戒情報が出された千葉県館山市は市内全域の約2万3000世帯に避難勧告を出した。北川港司(こうじ)さん(78)、文子さん(74)夫妻は自宅の停電と断水が復旧せず、4日目から同市北条の避難所に身を寄せている。台風で屋根を飛ばされたまま雨を迎え、夫妻は「雨で家は水浸し。どうすることもできない」と肩を落とした。
漁協職員、村井裕之さん(56)は損壊した鋸南(きょなん)町の自宅の屋根を15日にブルーシートで覆い、雨に備えたという。「すごい雨音で風も強く、シートにたまった水が地面に落ちる音が絶えず聞こえた。朝に確認すると、窓やシートの隙間(すきま)から水が入っていた」と話した。
市原市のゴルフ練習場周辺では、練習場を囲む高さ30~40メートルの鉄柱十数本と防護ネットが複数の民家に倒れ込んだまま、撤去のめどは立たない。練習場の関係者は「業者にお願いしているが被害の大きい地域に行って、こちらに回ってこない」と話した。【中島章隆、加藤昌平】
横浜市
横浜市金沢区の金沢臨海部産業団地は台風の高波による浸水で護岸が崩壊し、海水が流れ込んだ。福浦・幸浦地区では16日も従業員らが休日返上で作業に追われていた。
ペットの葬儀などを手掛ける「日本ペットセレモ」は鉄骨3階建ての本社ビルが2メートル以上の高波に見舞われ、1階部分の壁がなくなった。当時、3階で宿直勤務中だった従業員の高田昭輝さん(48)は「事務所にあったパソコンの顧客データが失われてしまったのが痛い。早く復旧したいが、これからを考えると、新たに高い防潮堤を造ってもらわないと不安だ」と訴える。
一方、横浜市内の海岸沿いにある「南本牧はま道路」は橋りょう部に船舶が接触して損傷を受けた影響で16日も通行止めが続いている。【田中義宏】
東京・伊豆諸島
東京都によると、伊豆諸島では6島で700棟近い住宅が損壊した可能性がある。修理業者や資材が不足しており、住民からは「いつ元通りになるのか」と不安が漏れる。
住宅150~200棟が損壊したとされる伊豆大島。「一睡もできなかった」。島の南部に住む団体職員、山田純子さん(62)の自宅は台風で屋根瓦が一部飛ばされた。シートで覆い雨漏りを防いでいるが島内には瓦屋がないといい、大工の数も限られる。本格的な修繕の日程は決まっていない。
大島町中心部の飲食店「寿し光」でも屋根が飛ばされ、冷蔵庫なども壊れた。店の2代目で町議の清水光一さん(26)は長期休業を覚悟したが、「予約客や観光客に大島の元気を伝えたい」と知り合いの大工に頼み込んで応急処置を施し、10日夜に店を再開した。「被害の大きな地域もあるが観光できる場所もある。確認した上で多くの人に島に来てほしい」と話している。【斎藤文太郎】