◆閣僚の辞任と首相の任命責任
3月12日、森まさこ法相は国会の答弁における不適切な発言に対し、安倍首相から厳重注意を受けた。森法相は、今回注意を受けた9日の「東日本大震災の時、検察官は最初に逃げた」発言以前から、検事長の定年延長を巡り矛盾した答弁を行い、野党から虚偽答弁ではないかと追求されていた。
このような問題行動を繰り返す森法相に対し、辞任を求める声は日に日に大きくなっている。もし森法相が辞任すれば、これまでに幾度となく「任命責任は私にあります」と発言してきた安倍首相も責任を追求されるだろう。
そこで本記事では、第2次安倍政権とこの20年間の政権を比較し、閣僚の辞任と首相の任命責任について考えていく。
◆「政治とカネ」問題で辞任した閣僚の多さ
第2次安倍政権が誕生した2012年12月26日から執筆時点である2020年3月12日現在、在職日数は2634日であり、その間に10人の閣僚が辞任した。内訳は、小渕優子経済産業相、松島みどり法相、西川公也農林水産相、甘利明経済再生相、今村雅弘復興相、稲田朋美防衛相、江崎鉄磨沖縄・北方担当相、桜田義孝五輪相、菅原一秀経済産業相、河井克行法相の10人。
ちなみに、この20年間で第2次安倍政権を含め、9つの政権が誕生し31人の閣僚が辞任している。内訳としては、森政権3人、小泉政権3人、第1次安倍政権4人、福田康夫政権1人、麻生太郎政権3人、鳩山由紀夫政権2人、菅直人政権4人、野田佳彦政権2人、第2次安倍政権10人。
他の政権と比べてみて、10人という数はとても多く感じる。しかし、第2次安倍政権は他の政権に比べ在職日数が長いため、辞任数だけで比較するのは不適切だ。そこで在職日数に対する辞任数を求めてみると、第2次安倍政権では263.4日に1人、閣僚が辞任していることがわかった。この数字は9つの政権の中で7番目にあたり、在職日数で比較してみると第2次安倍政権の閣僚辞任数は、他の政権に比べ少ない。ちなみに1位は、91.5日に1人の閣僚が辞任した第1次安倍政権だった。
在職日数に対する辞任数はそこまで多くはなかったが、一方で、「政治とカネ」問題を理由に辞任した閣僚の数は、圧倒的に安倍政権が多い。この20年間で「政治とカネ」問題を理由に辞任した閣僚の数は、14人。うち、第一次安倍政権では3人。第二次安倍政権では5人。両政権を合わせると8人となり、「政治とカネ」問題を理由に辞任した閣僚の57%が安倍首相に任命されていた。その他の森政権17%、小泉政権7%、鳩山政権7%、菅政権7%、野田政権7%と比べると、安倍政権の異常さが浮き彫りになり、近年稀に見るカネにまみれた政権だということがわかる。
◆「任命責任は私にあります」と繰り返し明言
次に任命責任について考えていく。日本国憲法68条1項に「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する」と規定があり、大臣の任命は首相の専権事項とされている。そのため不祥事を理由に閣僚が辞任した場合、必ずと言ってよいほど、野党は首相の任命責任を追求する。現在の野党に限らず民主党政権の時、野党であった自民党も行なっていた。
第2次安倍政権になってから、安倍首相が国会で閣僚の任命責任について触れたのは46回。そのうち、「任命責任は私にあります」と明言したのは38回。そして、安倍首相が具体的な任命責任をとったのは0回だった。
また、まるで自身の指導力を誇示するかのように「任命責任は私にあります」と38回も国会で明言していたにも関わらず、不可解なことに安倍首相は、2019年4月12日の参議院本会議を最後に、国会で任命責任を追求されても同発言を一度もしていない。その代わりに「私が任命した大臣が就任から僅か一か月余りで相次いで辞任する事態となったことは、国民の皆様に大変申し訳なく、任命した者としてその責任を痛感しております」と発言内容を変えている。安倍首相本人ではないので発言内容を変更した理由は定かではないが、去年の10月に、立て続けに2人の大臣が政治とカネ問題絡みで辞任し、これまでのような発言を続けるといつか自身に追求が飛び火すると考えたからなのかもしれない。
◆自身の任命責任を果たすべき
さらに安倍首相は、2014年10月30日の衆議院予算委員会において「(閣僚2名が辞任したことについて)任命責任者であるまさに私の責任である、このように痛感をしております。そこで、私の責任とは何かといえば、まさに今、我が国の前には問題が山積しているわけであります。いまだデフレ脱却は道半ばであります。アジアの安全保障状況は厳しさを増しているわけでございます。こうした山積する課題にしっかりと立ち向かっていく、問題を解決していくために全力を尽くしていく、政治に遅滞があってはならない、このように考えているところであります。」と答弁しており、安倍首相は新しい閣僚を任命し政策を進めることが任命責任を果たすことであると考えているようで、同様の発言を繰り返している。
しかし安倍首相が考える上記責任は、内閣として政策を進めていくという執行責任であり任命責任ではない。「政治とカネ」問題を原因として辞任した大臣へ対する首相の任命責任とは、違法な行為をした疑惑のある人間を大臣に任命したことであり、責任を果たすために取るべき行動は疑惑のある人間を、しかるべき場へ呼び説明責任を尽くさせることだ。安倍首相はこれまで38回も「任命責任は私にあります」と明言してきたのなら口だけでなく、妻陣営の公職選挙法違反で辞任して以降、未だに国民へ対しての説明責任を果たしていない河井克行元法相を国会へ呼び、自身の任命責任を果たすべきだ。
<文/日下部智海>
【日下部智海】
明治大学法学部4年。フリージャーナリスト。特技:ヒモ。シリア難民やパレスチナ難民、トルコ人など世界中でヒモとして生活。社会問題から政治までヒモ目線でお届け。