安倍政権の10万円給付 死刑囚に払っても海外邦人は対象外

間もなく新型コロナウイルスの感染拡大を受けた一律10万円給付が始まる。給付対象が「国籍を問わず基準日(2020年4月27日)において、住民基本台帳に登録された者」であることから、刑務所や拘置所に住民票を置く受刑者や死刑囚、在留カードを持つ外国人らも支給対象となる。ところが、日本国籍を持つ日本人なのに除外されているのが、世界に約130万人いる海外在留邦人だ。

ドイツ、カナダなど一部の先進国には日本と同様、外国人を給付金の支給対象に含める国がある。一方でオーストラリア、シンガポール、マレーシア、ベトナムなどでは外国人は除外されている。こうした国では商社、電機、自動車など日本から派遣された大企業の駐在員だけでなく現地で採用された日本人も多く働いている。マレーシアの製造機器メーカーで事務職として働く30代女性のAさんがこう語る。

「事実上の国境封鎖をアジアで初めて断行したマレーシアでは、ロックダウンによる厳しい活動制限令が敷かれ、5月12日まで延期されることが決まっています。4月分の給料は勤め先から支払われましたが、来月以降は減給か場合によっては会社自体がどうなるか分かりません。自分の置かれた状況は日本で働く多くの日本人とほぼ同じか、もっと悪いと思います。日本政府が支給する一律給付の10万円があれば、とても助かります」

この女性は「在留届」を住民票の代わりにして給付金を申請できないか在マレーシア日本国大使館に問い合わせたところ、「在留届と住民票はリンクしていません」と断られたそうだ。

■「国から見捨てられたようで悲しい」

「在留届には本籍地はもちろん、パスポート番号、日本国内の連絡先など個人情報を細かく書かされます。4月27日の住民票を基準にするのなら、4月27日の在留届を基準にすれば済むはずです。今、政府は国内の対応でバタバタしているのかもしれませんが、海外で不安な思いをしている日本国籍を持つ日本人はたくさんいます。国から見捨てられたような気がして悲しい。マレーシアに来るまで日本で税金を払い続けてきましたし、年金は今も納めているのに残念です」(Aさん)

政治評論家の伊藤達美氏がこう言う。

「海外在留邦人の窮状を放置しているのは、日本政府の怠慢ですよ。邦人保護は国の責務です。一刻も早く困っている人たちに助け舟を出すべきです。官邸がトップダウンで指示を出せば外務省や総務省も動くでしょう」

アベノマスクを送りつけたり不良品を検品している間にも事態は刻一刻と深刻化している。あまりのんびりしていると、選挙の時、海外在留邦人に手痛いシッペ返しを食らうに違いない。