3年前の九州北部豪雨で被災したJR日田彦山線を巡り、福岡県東峰村の渋谷博昭村長が26日、小川洋知事が提示したバス高速輸送システム(BRT)による復旧案を受け入れたことで、村民が願い続けた鉄道復旧の可能性はついえた。村内には三つの駅があり、大分県日田市や筑後地区などへの通勤・通学、買い物や通院の足として利用されてきた。「めがね橋」を列車が走る光景などは村の観光資源でもあった。しかし、村で再び列車の姿を見る機会はなくなった。【桑原省爾】
地元の住民組織「日田彦山線の完全復旧を求める会」の一員として署名活動に取り組んだ筑前岩屋駅近くに住む和田将幸さん(46)は「高千穂鉄道が台風被害で廃線になって沿線が寂れたという宮崎の人たち、赤字で鉄道が存続の危機にある地域の人たちの思いも背負っていたので、残念で仕方がない」と声を落とした。「求める会」の片岡拓之代表は「県政の大きな流れにはあらがえず、支援者の期待に応えることができずに残念。力不足をお許しください。住民一丸となって明るい未来の構築を目指す」と無念さをにじませた。
大行司駅近くに家がある樋口朗さん(70)は24日の小川知事による地元説明会で、徹夜で作ったという資料を示し、豪雨災害で寸断された福島県のJR只見線の復旧が基金の積み立てと上下分離方式で進んでいる例などを挙げて知事に再考を迫った。樋口さんは「強力なリーダーシップがあれば鉄道復旧はできたはずだ。村長は結論を出すのが早すぎた」と苦言を呈した。知事のBRT案については「狭く長い釈迦岳トンネル内での事故が心配。めがね橋は高さがあり、積雪や凍結時は危険だ」と指摘した。
一方、佐々木紀嘉村議会議長は「(添田町と日田市がBRT案を容認し)前と後ろが詰まってしまってはどうにもならず、時機を失して孤立するわけにはいかなかった」と村長の決断に理解を示した上で「知事は我々の代弁者として責任を持って案を進めてほしい」と注文した。村議の一人は「鉄道復旧を求めて村が運動したことがBRT専用道の延伸を勝ち取った。運動は決して無駄ではなかった」と述べた。