【コロナ禍が生む「嫌日外国人」】#14
世界的な人材の獲得競争が起きている。このままでは優秀な外国人材が日本へ来なくなる――。新聞などで最近よく見かける主張だ。経済界に近いメディアのみならず、“人権派”の識者も多用する。安倍政権も、外国人の受け入れには積極的だ。
しかし経済界、また政府にしろ、「優秀な外国人材」の受け入れなど望んでいるとは思えない。優秀な外国人が日本に押し寄せれば、日本人の仕事が奪われてしまう。本音で求めているのは、人手不足が著しい低賃金・重労働の担い手なのだ。
ただし「底辺労働者を受け入れる」と言えば、世論が納得しない。そのため「優秀な外国人材」や「人材の獲得競争」といった詭弁が弄される。では、実際にはどんな外国人が来日しているのか。
日本への人材送り出し国として中国をしのぎ、最大の存在となったのがベトナムだ。実習生と留学生だけで約30万人のベトナム人が在留している。
実習生の場合は、「実習」とは名ばかりの出稼ぎ労働者である。留学生は「優秀な外国人材」をイメージしがちだが、貧しい若者の出稼ぎの手段という点で、何ら実習生と変わらない。東京都内の日本語学校で働くベトナム人職員が言う。
「日本に行くベトナム人は学歴がなく、母国では仕事も見つからない人たちが多い。最近の留学生は、とりわけ貧しい(ベトナム北中部の)タインホア、ゲアン、ハティン省の出身者が目立ちます。彼らは借金を背負って日本に渡ってくるのです」
■「優秀でカネがある」が理由ではない
成績優秀もしくは富裕層のベトナム人は、日本ではなく米国への留学を目指す。次に人気なのが欧州やオーストラリアだという。
「その次が日本、でもありません。欧米や英語圏へ留学できないベトナム人は、国内の大学へ進学しますから」
貧しいベトナム人に対し、出稼ぎの道を閉ざすべきだとは思わない。しかし、多額の借金を背負わせ「留学生」として受け入れ、底辺労働者として酷使したうえ学費まで吸い上げるというシステムは、あまりにひどい。
新型コロナウイルスによって、外国人労働者の来日は激減した。収束後には、留学生受け入れのハードルが、さらに下がる可能性がある。「人材の獲得競争」という口実も、ハードルを下げたい経済界や、教育業界の思惑があってのことだ。
ただし、受け入れ要件が緩和されれば、本当に優秀な外国人材は日本から一層遠ざかる。いかに詭弁を使おうと、アジアの若者たちには、もはや日本は「夢の国」とは映っていない。それどころか、彼らを都合よく利用する狡猾な国だとバレている。 =つづく
(出井康博/ジャーナリスト)