長野市長沼地区への災害公営住宅の建設見送りについて、市は9日、理由や経緯を初めて同地区の住民に説明した。2019年10月の台風19号から約2年での決定に市は「判断の遅れ」を陳謝する一方、希望者が隣接する豊野地区に建設中の災害公営住宅への入居が可能になったことから見送りを決めたなどと強調した。これに対して住民からは「なぜ2年もかかったのか」との不満が相次いだ。
説明会は同市津野の長沼小学校で開かれ、住民ら約40人が参加。市は建設候補地について、「木造家屋倒壊危険区域」から外れるものの、台風19号の浸水高以上とするには2・5メートル以上のかさ上げが必要になると説明した。ただ、かさ上げだけでは安全性を担保できないことや、必要となる盛り土に「高齢者の生活が不便になる」との声が寄せられたと指摘。入居希望の5世帯は豊野地区の災害公営住宅(73戸)などに入居できる見通しが立ったことも挙げた。
小林正明・市建設部長は、「決断が遅れたことをおわびする」と陳謝した上で、「将来にわたり入居者の命に責任を持たなければいけないが、かさ上げだけでは十分とは言えない」とし、「決定を理解してほしい」と求めた。
一方、住民からは「長沼が危険だから建てられないというのは、復興に向かって頑張る住民に失礼だ」などと批判が相次いだ。小林部長は「あくまでも公営住宅を造れない理由であり、コミュニティーが再生できるよう今後も支援していく」と述べた。
入居を希望していた女性(61)は「なぜ2年もかかったのかという具体的で
真摯
(しんし)な説明はなく、納得はできない」と話した。
昨年、公営住宅の建設を求める要望書を提出した「長沼地区復興対策企画委員会」の柳見沢宏委員長(69)は「これまで話し合うと言いながら議論はかみ合ってこなかった。復興は道半ばで、市は今回のことを反省してほしい」と指摘した。