生後まもない長男への傷害致死罪で起訴された大和市の無職女性(39)の裁判員裁判の判決で、横浜地裁(奥山豪裁判長)は12日、女性が心神喪失の状態だった疑いが残るとして、無罪(求刑・懲役5年)を言い渡した。
判決によると、女性は2018年8月22日、自宅で、生後1か月の長男を床に放り投げるなどして頭に衝撃を与え、死亡させた。しかし奥山裁判長は、起訴後に精神鑑定を行った医師の証言を基に、女性が08、09年頃に統合失調症を発症し、事件当日には「(長男は)悪魔の子だ。のろわれている」といった幻聴を聞いていたなどと認定。「幻覚妄想状態に支配され、自らの意思を働かせる余地は残されていなかった」と述べた。
これまでの公判で女性は、「『声』が聞こえ、体が勝手に動いたような感覚だった」「(長男から)悪魔を追い払って、私が助けなきゃと思った」「『声』の存在を周囲に明かせば家族を殺すと脅されていた」などと供述。検察側は、刑事責任を減免するための「詐病」の疑いがあると主張したが、判決は、長男への暴行には従来の女性にはみられない異常な側面があったと指摘し、女性に知的障害があることも踏まえ、作り話ではないと結論づけた。
奥山裁判長は判決後、「病気の影響とはいえ、生まれたばかりの子を死なせたのは紛れもない事実で、非常に悲しい結果。周りの人を頼って治療に取り組んで」と説諭した。