暴行死初公判、母親の虐待は子供に茶碗1杯の冷や飯

滋賀県愛荘町のアパートで令和元年、無職の岡田達也さん=当時(25)=が同居していた元少年(20)と母親の小林久美子被告(56)から暴行を受けて死亡したとされる事件。傷害致死などの罪に問われた元少年の裁判員裁判の初公判では、事件が起こるまでに小林被告の子供たちを含む多くの人間が小林被告宅へ出入りし、同居人らの間で激しい暴力がふるわれるなど、元少年を取り巻く異様な生活実態が明らかとなった。
物心がついたときから、家には知らない男性がいて、次第に暴力をふるわれ、食事制限をされる-。
20日に大津地裁で開かれた初公判で弁護側は、元少年が育ってきた家庭環境について、こう説明した。
元少年はこの日、岡田さんを死亡させたとする傷害致死罪について起訴内容を否認。弁護側は岡田さんを衰弱死させる暴行は「小林被告が単独で行った」として無罪を主張している。
証拠調べでは、小林被告の子供たちの供述調書が読み上げられ、岡田さんら同居人だけでなく、元少年以外の自身の子供たちにも凄惨(せいさん)な虐待を加えていたことが判明。小林被告に引き取られた娘は平成23年から同居していた約1年4カ月を「地獄の生活」と振り返り、髪の毛をつかまれて顔を壁に打ち付けられたり、胸などにたばこを押し付けられたりされたことを明らかにした。
供述調書が読み上げられた小林被告の3人の子供たちはいずれも児童養護施設で育った。16歳ごろから小林被告や元少年、複数の男性らと同居を始めたが、小林被告の元から逃げては戻る生活を繰り返していた。
小林被告は子供たちを含む同居人に虐待対象となった人を殴らせたり、食事を制限したりした。子供たちに対しても、腐りかけたみそ汁をかけた茶碗(ちゃわん)1杯の冷や飯を1日に1回程度しか与えず、30年10月ごろに知人を介して小林被告と知り合い、同居を始めた岡田さんにも、同様の食事が与えられていたという。今後は小林被告を中心とした特殊な人間関係の中で被害者となった岡田さんと元少年の関係性が焦点となる。
起訴状によると、元少年は令和元年6~10月、愛荘町のアパートで小林被告と共謀し、同居していた岡田さんに十分な食事を与えずに衰弱させたほか、金属製の棒で顔や胸を殴るなどの暴行を加え、敗血症性ショックで死亡させたなどとしている。