地元アイドルグループのライブイベントが行われていた徳島市の雑居ビルに放火したとして、殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた徳島県牟岐町、無職岡田茂被告(39)の裁判員裁判で、徳島地裁は25日、懲役11年(求刑・懲役12年)の実刑判決を言い渡した。藤原美弥子裁判長は「身勝手かつ短絡的な動機に酌量の余地はない。社会に与えた不安感など影響は軽視できない」と述べた。
判決によると、岡田被告は昨年3月14日、グループメンバーらが死亡するかもしれないと認識しながら、雑居ビルに侵入し、3階にガソリンをまいて放火し、床や壁など約50平方メートルを焼いた。イベントが行われていた4階には約70人がいたが、避難して無事だった。
検察側は公判で、岡田被告はグループメンバーらとトラブルを起こし、一方的に恨みを募らせたと説明。事件当日には京都アニメーション放火殺人事件に関する動画を見た後、ビルに向かったとし、「多数の人が死んでも構わないと考え犯行に及んだ」と指摘した。
弁護側は「被告は事件で社会から逸脱すれば自殺に踏み切れると考えた。大人数を殺す意思はなかった」と主張していた。
判決で藤原裁判長は「当日に現場を下見するなど、計画的で犯意は強固。多数の参加者がいると知りつつ放火しており、犯行態様は危険かつ悪質だが、積極的に人に危害を加える意図を有していたとはいえない」と述べた。