新型コロナウイルスの陰性証明を使い飲食店の人数制限などを緩和する「対象者全員検査」の活用が進んでいない。「ワクチン・検査パッケージ」の代替策として導入されたが、「まん延防止等重点措置」適用の36都道府県のうち、全員検査を緩和の条件に認めるのは17都府県にとどまる。認められた地域でも店側からは使い勝手の悪さを指摘する声が多い。(古屋祐治)
全員検査は、1月の政府の基本的対処方針改定で盛り込まれた行動制限の緩和策だ。店や施設の利用者がPCR検査などで陰性を証明すれば、飲食店での1卓4人以下やイベントでの最大2万人以下の人数制限を緩めることができる。
緩和策では、ワクチン2回接種か陰性証明を条件とする「ワクチン・検査パッケージ」が検討されていたが、オミクロン株によるブレイクスルー感染の増加で、より安全な方策として導入された。
しかし、読売新聞の取材では、重点措置適用の36都道府県のうち、全員検査での緩和を認めるのは半数以下の17都府県。緩和の対象に飲食店を含めず、結婚式などに限定した地域も多い。
活用を見送った自治体が多いのは、過去にない感染拡大で「検査キットが不足し、全員検査を導入すれば医療機関の検査が後手にまわりかねない」(広島県)という理由からだ。「オミクロン株は感染力が強く緩和策を取る状況でない」(島根県)との声もあった。
活用する自治体は「店に(時短などの)対策を求める以上、緩和策を示すことが重要だ」(香川県)とするが、店舗や施設が実際に使うケースは少ない。
東京都では「全員検査」を使えば1卓4人以下の制限がなくなる。しかし、都内の感染対策の認証店約10万7000店のうち、都の調査で全員検査を利用する意向を示したのは1割に満たない約4300軒という。
消極的な飲食店が多いのは、全員検査をせずとも、1卓4人以下で複数のテーブルに分ければ対応可能という事情が大きい。
東京都文京区の和食料理店は、5人以上の予約の場合、1卓5人以上で利用するなら全員検査が必要になることを説明し、1卓4人以下に分かれるよう勧めている。男性従業員は「お客さんに手間をかけて検査をしてもらうのは現実的ではない」と明かす。多くの地域の結婚式場も、同様の対応を取っているという。
イベントでの活用も進んでいない。大阪府では全員検査で2万人以下の収容人数上限が撤廃されるが、約4万人収容のパナソニックスタジアム吹田(大阪府吹田市)で19日実施されるサッカーの試合は、2万人以下で行われる予定だ。
埼玉県は36都道府県で唯一、政府が活用に消極的だった「ワクチン・検査パッケージ」を取り入れており、担当者は「検査パッケージの方が全員検査より使いやすいと考え、選択肢として残した」と理由を説明する。
近畿大の上崎哉教授(行政学)は「第6波では検査キット不足で全員検査は緩和策として有効に機能しなかった。今後も緩和の条件とするならば、国が十分なキットを確保するなどの対応が必要だ」と話している。