「感無量だ」各地の原告から喜びの声 強制不妊で国に賠償命令

旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして、近畿地方に住む夫婦と女性の計3人が国に計5500万円の国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(太田晃詳(てるよし)裁判長)は22日、旧法を違憲と判断した。その上で、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に請求を棄却した1審・大阪地裁判決を変更し、国に計2750万円の賠償を命じた。一連の訴訟で旧法の違憲性と国の賠償責任をいずれも認め、原告側が勝訴したのは初めて。
「私は私で勝ちたい」
初めて国に賠償を命じた大阪高裁判決に、各地で同種の訴訟を続ける原告からも喜びの声が上がった。
札幌訴訟原告の小島喜久夫さん(80)は札幌市で記者会見を開き、「私が生きているうちに勝てるのか、と思っていた。うれしくてうれしくてどうしようもない」と笑顔を見せた。
2021年1月の札幌地裁判決は旧法を違憲としつつ、除斥期間を理由に請求を棄却した。小島さんは「ずっと苦しみながら人生を生きてきた。私は私で勝ちたい」と決意を語り、同席した妻からティッシュを受け取ると目頭を押さえた。弁護団の小野寺信勝弁護士は「全国の今後の判決に、とても良い足がかりを提供してくれた」と評価した。
東京訴訟原告の北三郎さん(78)=活動名=も「信じられない。感無量だ」と興奮した様子で話した。
東京地裁判決も20年6月、除斥期間を理由に請求を棄却した。同様の判決が各地で続き悲観的になることもあったが、「暗いところから抜け出したような気持ちだ」と話した。3月11日には東京高裁で自身の訴訟の判決が予定されている。「東京でも大阪と同じように、勝利することを期待したい」と願った。
「判決に力をもらった」
福岡地裁で審理中の原告で、聴覚障害がある朝倉典子さん(79)=仮名・福岡市=は「判決に力をもらった」と手話で喜びを語った。
1967年10月に結婚する1週間ほど前、夫の彰さん(享年83)が聴覚障害を理由に旧優生保護法に基づく不妊手術を受けさせられた。2019年12月に夫婦で訴訟を起こしたが、彰さんは21年5月に亡くなった。典子さんは「年を取り、裁判を途中でやめようかと何度も思ったが(大阪の判決で)自分も頑張ろうと気持ちを新たにできた。夫も天国で喜んでいると思う」とほほ笑んだ。
「周りで親子連れを目にする度に『うらやましい』と感じてきたが、幼い頃から耳が聞こえる人に従うよう教えられてきたので、おかしいと声を上げる権利さえないと思って生きてきた。今も声を上げられずにいる仲間が(新たに名乗りを上げて)出てくることにも期待したい」と語った。
熊本地裁でも熊本県の2人が係争中。不妊手術で睾丸(こうがん)を摘出された苦しみを訴える原告の渡辺数美さん(77)は「ようやく公正中立な判断をしてもらった。このまま被害者の声が届かないのであれば、日本は法治国家ではないと思っていた。一筋の光明が見えた」、原告の女性(75)は「本当にうれしい。熊本地裁も同様に私たちの訴えを認めてほしい」とするコメントを発表した。
熊本訴訟の原告弁護団は大阪高裁判決について「除斥期間の適用を制限することで国の免責を認めなかったことは、全国の被害者に大きな希望を与え、画期的」と評価。長期間にわたって権利侵害が継続していたと認められた点について「障害者が長年にわたって社会的に抑圧されてきた実態を正面から認めるもので、高く評価すべきだ」と述べた。【高橋由衣、遠山和宏、山口桂子、栗栖由喜】