政府は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が、東アジアの安全保障環境に与える影響に警戒を強めている。国際社会がロシアの行動を制止できなければ、中国に誤ったメッセージを与え、台湾などで一方的な現状変更を試みる可能性があるとみているためだ。
岸田首相は25日の記者会見で、対露追加制裁を発表した後、「力による現状変更は決して許されないという意思を示すことが、アジアを含む他の地域で同様の行為を抑制することにつながる」と強調した。念頭にあるのは、南シナ海と同様、東シナ海でも軍事的圧力を強める中国だ。
中国の
習近平
(シージンピン)国家主席は中台統一の目標を堅持し、台湾周辺で軍事的威嚇を続けている。沖縄県・尖閣諸島周辺海域でも中国海警船による航行が常態化しており、領海侵入を繰り返している。
中露両国は、力による領土拡大を辞さない姿勢で共通する。ロシアとウクライナの関係を中国と台湾の関係に重ね、「今すぐ何かが起きなくても、今回のロシアによるウクライナ侵攻が、5年、10年後の中国と台湾に影響する可能性はある」(自民党幹部)との見方も広がる。
日本政府は、中露の接近に神経をとがらせる。ロシアのプーチン大統領と習主席は今月上旬の首脳会談で両国の貿易関係の強化で合意し、ウクライナ侵攻への経済制裁に備えた連携とみられている。24日には中露外相が電話で会談し、中国側がロシア側の主張に理解を示したという。
両国は日本周辺で軍事活動を活発化させ、軍事的な結びつきを深めている。昨年11月には中露軍の爆撃機が日本海と東シナ海、太平洋の上空を合同で飛行し、日本の防空識別圏に入った。安倍元首相は25日、自民党の会合で「ロシアの武力侵攻は、中国が台湾にどのような対応をとるかを占う意味で深刻な出来事だ」と危機感をあらわにした。
外務省によると、ロシアが侵攻した24日、複数の中国軍機が台湾の防空識別圏内に進入した。自民党の佐藤正久外交部会長は25日の会合で「やはり来たか、という状況だ」と述べ、ロシアの侵攻に合わせた中国の挑発との見方を示した。
ウクライナ情勢の推移は、政府が年末に改定する安全保障政策の基本指針「国家安全保障戦略」の議論を加速化させるとの見方もある。閣僚経験者は「ロシアの侵攻を目の当たりにして、日本で防衛力強化の議論が活発になるのは当然だ」と話している。
対露非難決議 与野党が調整
与野党は25日、ロシア軍によるウクライナへの侵攻を非難する決議を3月初めに衆参両院の本会議で採択する方向で調整に入った。また、参院予算委員会は25日の理事会で、3月2日にウクライナ情勢をテーマに集中審議を行うことで合意した。