盗難被害の男性「何かすかっとしない」…警官名乗る男を追跡したら、途中で姿消す

秋田県内での被害が後を絶たない特殊詐欺の手口が多様化していることが県警のまとめでわかった。昨年の被害総額は8000万円近くに上り、高齢者宅を標的とした「キャッシュカード詐欺盗」などがある一方、パソコンやスマホを使う若年層にも被害は広がっている。県警は幅広い世代に対し、注意を呼びかけている。
県警によると、昨年の特殊詐欺被害の認知件数は45件で、総額7888万1950円。県警が統計を公表する2013年以降の件数をみると、14年の86件をピークにいったん減少傾向だったが、19年からは再び増加に転じている。
新たな手口が登場し、被害が多様化しているのが特徴。子や孫をかたる「オレオレ詐欺」は1件にとどまる一方、サイトの未払い料金やパソコンウイルス対策を名目にした「架空料金請求」が30件(被害総額4984万9770円)、警察官などを装って訪問してキャッシュカードをすり替える「キャッシュカード詐欺盗」4件(同940万1000円)のほか、キャッシュカードの確認や交換が必要だと説明してカードや暗証番号をだまし取る「預貯金詐欺」3件(同831万1000円)などがあった。
年代別でみると、65歳以上が占める割合は42・2%(19件)で昨年の70・7%(29件)から大幅に減少した。一方、20~40歳代の被害は28・8%(13件)に上っており、うち10件はインターネット利用に関係する架空料金請求だった。県警捜査2課では、パソコンやスマートフォンを日常的に使用する若年層にも被害が広がっていると指摘している。

「『警察』だと言われると信じてしまう」。昨年11月にキャッシュカード3枚を盗まれる被害に遭った、秋田市の90歳代男性が読売新聞の取材に対し、やりとりを振り返った。
「臨港署の松本です。東京駅のコンビニで詐欺事件があり、被害者の中にあなたの名前がありました」。午前10時半頃、署員を名乗る男から自宅にかかってきた電話が、ことの始まりだった。
男は、キャッシュカードの確認のために「浜岸」という署員を向かわせると話した。その電話がつながった状態の中、30~40歳代くらいで、黒っぽい帽子とコートにマスク姿の男が自宅に現れた。男が写真付きの身分証のようなカードを示して名乗ったことで「警察官」と信じた男性は、指示通りにキャッシュカード3枚と暗証番号を書いた紙を封筒に入れた。
印鑑を取りに、いったんその場を離れて戻ると、このカード類は別の封筒に入れられていた。男はカード入りの封筒を3日後、銀行に持って行けば補償金が受け取れると話した。男性は半信半疑で男に礼を言って、見送ったという。
「何かすかっとしない」。疑いを持った男性は自転車で出て行った男の後を追った。秋田臨港署へ向かう途中で姿が消えたため、ますます不審に思い、そのまま同署へ。そこで相談して被害がわかった。封筒の中身を確認すると、キャッシュカードは入っておらず、トランプのカードなどにすり替えられていた。
男性は現金が引き出される前にカードを止めて金銭的な被害は免れたものの、「今考えれば、相手の名前などを細かく聞いておけばよかった。犯人を野放しにしてはいけない」と話す。