認定こども園の一部が「保育園枠」で通う園児を「幼稚園枠」に移すことで国などの給付金を通常より多く得ている問題で、会計検査院が、鹿児島県
鹿屋
(かのや)市に対し、調査に乗り出したことが明らかになった。二つの枠による給付金の算定方法や、保育内容の違いなどについて詳しく調べているとみられる。関係者によると、検査院は全国規模で同様の調査を進めているという。
会計検査院の調査官数人が8日に同市役所に入り、実地調査が行われた。市内の認定こども園の施設運営に関する帳簿や関係書類の精査を進めるとともに、市の担当職員などに状況を聞き取ったとみられる。
鹿屋市では2020年度、認定こども園計27園のうち、19園で、幼稚園枠の定員が計154人超過していた。保育状況に大きな変化がないにもかかわらず、園児を幼稚園枠へと変更しただけで、通常より約2倍高い給付金を得ていた園もあった。
定員を少なく設定した幼稚園枠へと移すと給付額が高くなる仕組みで、市は、保育の実態にそぐわない給付金は、20年度だけで約9000万円にのぼったと試算している。
関係者によると、保育園枠からの変更は、年度の途中で相次いで行われており、こうした枠の変更がどう行われていたかなどについて、検査院は関心を持っているとみられる。
現行制度では、幼稚園枠への変更を厳密に禁じるルールはなく、定員を24か月連続で超えるなどしない限りは給付金を減らす対象にならない。
読売新聞の取材や関係者によると、北海道や、九州のほかの自治体でも、関係書類を取り寄せるなどして調査が進められている。
所管は3府省、「一元化」進まず
認定こども園で実態のない枠の変更が行われている背景には、保育園と幼稚園という異なる制度が持ち込まれたことがある。鹿児島県鹿屋市以外の自治体からも、同じ問題を指摘する声が上がっている。
厚生労働省の所管で「福祉」の側面がある保育園は、親が共働きなどの保育認定が必要だ。一方、文部科学省所管の幼稚園は「学校」であり、誰でも利用できる。認定こども園は両方の機能を持つが、親が仕事を辞めるなどして保育認定がなくなっても、幼稚園枠に移ることで退園せず通い続けられることが特徴とされる。
しかし、利用料が早く無料になるなどの理由で、幼稚園枠に移る事例は各地で相次ぐ。松江市の担当者は「制度の趣旨とは異なるのではないか。本当に幼稚園枠が必要な人が利用できなくなる」と指摘する。
国や自治体が園に支給する給付金は、幼稚園枠では、副園長や学級担任の配置といった固有の加算が設けられている。加算で給付金が高額になるケースがあることは、認定こども園などの制度を議論する国の専門家会議でも指摘されたが、議論が深まらなかった。
京都市は「同じ部屋で一緒に過ごしているのに(幼稚園枠だけ)高い給付金を支払うのは、実態に合わない」とし、神奈川県秦野市も「給付額に差があることに矛盾を感じる」という。
会計検査院が2019年に公表した報告では、厚労省と文科省、認定こども園を所管する内閣府の3府省が絡む現体制について、全国166市区町村の60・8%が「デメリットを感じる」と回答。同趣旨の文書が別々に送られてくるなどし、検査院は「3府省の連携が十分ではなく、効率化が図られていない」と指摘した。
保育園と幼稚園を一体的に運用する「幼保一元化」は、省庁の反対などで長年実現しておらず、そのひずみが現れていると言える。