大豆イソフラボンでチョウザメが全雌化 近大水産研究所が国内初

高級珍味が身近になるかも――。近畿大水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)の稲野俊直准教授(水産増殖学)の研究グループが、女性ホルモンに似た作用を持つ「大豆イソフラボン」の成分をチョウザメに与え、全てを雌にすることに成功した。発表した近大によると、国内初の成果という。キャビアはチョウザメの卵の塩漬け。稲野准教授は「全雌化によって生産効率が上がる。実用化が進めば、今より手ごろな値段でキャビアが味わえるようになる」と話している。
稲野准教授によると、チョウザメの雄と雌の生まれる割合は半々で、養殖ではキャビアの生産効率の悪さが課題となっている。女性ホルモンの投与で雌化することは既に確認されていたが、食用魚への投与は禁止されている。そのため、サプリメントとして市販もされている大豆イソフラボンを用いた。
実験にはチョウザメ科のコチョウザメを使った。大豆イソフラボンの成分の一つ「ゲニステイン」について、含有量に差を付けて与えた3グループなどを比較した。各条件下でふ化2カ月後から180日間、25匹を育てた。その後、約70日間通常の餌で飼育し、1グループあたり8匹前後を解剖すると共に、体表の粘液から遺伝的な雌雄を特定した。
その結果、1グラム中1000マイクログラムのゲニステインを含む餌を与えたグループでは、雄の遺伝子を持つ5匹全てで卵巣が確認された。一方、含有量をこのグループの10分の1、100分の1とした他グループでは、雄の遺伝子を持つ個体から卵巣は確認できなかった。
ただ、実験ではゲニステインを抽出した試薬を餌に含ませたが、食用のための飼育ではこの方法は禁じられている。稲野准教授は「大豆の搾りかすなどを含む餌から大豆イソフラボンを自然に摂取できる方法を考え、数年で実用化させたい」と話している。
同実験場は21年、ゲニステインを使ったナマズの雌化に成功していた。チョウザメの研究は1995年から開始。2008年からは飼育されたチョウザメから採取したキャビアを、関連会社が「近大キャビア」として販売している。【竹内之浩】