宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震後、初めての週末となった19日、被災した観光地では予約客のキャンセルや宿泊施設の臨時休業が相次いだ。春の観光シーズンの3連休初日。脱線した東北新幹線の運休もあり、観光業者はため息をもらした。
日本三景の一つ、宮城県松島町の松島。朝の景勝地に人影はまばらだった。遊歩道のタイルはところどころ亀裂が入り、コンクリートが浮き上がる様子が目についた。
旅館、ホテルなどの宿泊施設では、首都圏からの予約のキャンセルが相次いだ。松島観光協会によると、昨年3月の観光客数は約7万人。その6割ほどが首都圏を中心とした20日頃からの観光客だった。同協会会長の志賀寧さん(69)は「春の観光シーズンの出はなをくじかれた。新幹線もしばらく運休すれば相当な痛手だ」と肩を落とす。
松島湾に浮かぶ島々を巡る観光船も空席が目立った。運航する地元組合の担当者によると、例年この時期は卒業旅行の若者や春休みの家族連れで400人乗りの船が満席になる。だが、今回の地震で3連休中の予約の9割がキャンセルになったという。19日朝の便の乗客は15人ほど。福島市から家族で訪れた会社員男性(43)は「車で約10年ぶりに来たが、かつてのにぎわいがない」と驚いていた。
「仙台の奥座敷」と呼ばれる仙台市太白区の
秋保
(あきう)温泉でも、大きな揺れで旅館のボイラーが故障したり、浴室のタイルがはがれたりするなど施設に被害が出た。秋保温泉旅館組合によると、18日時点で、加盟する11旅館のうち5旅館が臨時休業しているほか、新規予約の受け付けを止めるなど通常通りの営業ができない旅館もある。
秋保温泉の温泉旅館「緑水亭」では、スプリンクラーや水道管が破損して水浸しとなり、ガラスが割れて飛び散った。17日から臨時休館とし、営業再開のめどは立っていない。同館の若
女将
(おかみ)、高橋知子さんはブログに館内の写真とともに「東日本大震災の倍以上の被害を受けた」と書き込んだ。取材に対し「多くの励ましをいただいており、またお越しいただけるように何としても再起をかけて頑張りたい」と語った。
同組合の佐藤司事務局長は「既にゴールデンウィークの予約キャンセルも来ている」と打ち明ける。臨時休業中の旅館の担当者は「修理業者も混み合っていて、復旧に時間がかかりそうだ。コロナ禍も落ち着き、客が戻っていたのに」と落胆する。
蔵の町並みが広がる宮城県村田町の「重要伝統的建造物群保存地区」も地震で大きな被害を受けた。同地区の造り酒屋「大沼酒造店」では、蔵の土壁の一部が崩れたほか、水道管も破損し、酒造りができなくなっている。大沼健社長(40)は「4月の花見や歓送迎会を前にした仕込みの最盛期だったのに」と肩を落とす。
昨年2月の地震で被害を受けた建造物も多く、観光案内所を運営する「まちづくり村田」取締役の関場友紀さんは「今回の地震で再び壊れ、修復の見通しが立たなくなってしまった」と困惑していた。