コロナ禍、いのちの電話「相談の深刻さ増した」 背景に“三重苦”

感染不安/経済的困窮/つながり希薄化、背景に
2021年の山口県内自殺者数(速報値)が227人に上ることが県警のまとめで分かった。近年、リーマン・ショック後の09年(416人)をピークに減少傾向にあるものの依然として毎年200人を超えている。悩みや生きづらさを抱えた人の相談を受けるNPO法人「山口いのちの電話」によると、近年の相談には新型コロナウイルスの影響を感じるものも少なくないという。同法人の上原啓子事務局長に、相談者が置かれている現状や、身近に悩んでいる人がいた時の対応などを聞いた。【森紗和子】
同法人が21年に受けた電話相談3419件のうち739件(21・6%)には、実際に自殺をほのめかしたり、自殺未遂行為に及んでいたりするなど自殺傾向があった。電話相談の件数全体は新型コロナ流行前の19年(3068件)と比べて著しく増加した訳ではないが、「より一件一件の相談の深刻さが増した」と上原さんは話す。
背景には、未知のウイルスへの感染の不安や感染拡大に伴う経済的困窮、そして人とのつながりの希薄化という「三重苦」があるという。誰とも話さず一日を終える相談者もおり、上原さんは「人は誰かと話すことによって手放せるものもあるし、他者との関わりの中で必要とされて輝く。そういう意味で(人との接触が減った)コロナ禍では生きる意味が簡単に流されてしまう」と危惧する。だからこそ、やっとつながった電話の向こうの相談者には「あなたは大切な存在で、こうして生きているだけで100点満点だよ」と伝えることにしている。「全ての命には意味がある」との思いからだ。
身近な人からそうした相談を受けた際、我々はどうしたら良いのだろうか。「まずは自分のことを信頼して相談してくれたことを認める。『誰かに見放されても、私たちは必要とする仲でいようね』と伝えることで相談者の希望につながる」と上原さん。また、話を聞いた上で心の専門家など適切な窓口を勧めるのも一つの手段で、勧める際に「あなたが大事な存在で早く笑顔になってほしいから」としっかり伝えて「(相談に行くことは)珍しい話ではないらしいよ」「心が風邪を引いているんだったら一緒に行こうか」などと声を掛けるのも良いという。「答えが出なくても『誰かとつながっている』『誰かと時間を共有している』と思えるだけで、生きている意味が見いだせる人がたくさんいる」と強調した。
不安や悩みの主な相談窓口
山口いのちの電話(0836・22・4343)=午後4時半~午後10時半
こころの救急電話相談(0836・58・4455)=24時間対応
いのちの情報ダイヤル“絆”(083・902・2679)=火・金午前9時~午前11時半、午後1時~午後4時半