「400年ブナ」倒れる 伐採を逃れた秋田側・白神山地のシンボル

白神山地の秋田側のシンボル的存在だった岳岱(だけだい)自然観察教育林(秋田県藤里町)の通称「400年ブナ」(樹高26メートル、幹回り4・85メートル)が、今冬の豪雪の重みで倒れ、雪に埋もれていることが分かった。林野庁の「森の巨人たち百選」にも選ばれ、トレッキング客らの目を楽しませていただけに、惜しむ声が上がっている。【田村彦志】
発見したのは、秋田白神ガイド協会長の斎藤栄作美(えさみ)さん(72)。3月21日に根元付近から横倒しになって3メートル近い雪に埋もれているのを確認した。1999年の台風18号で大枝が折れ、幹の一部がそがれるなど樹勢の衰えが目立っていただけに、豪雪による影響を心配し、知人と見回りに訪れた際に見つけた。
斎藤さんは「あるはずの姿がなく、周囲を見回したら雪の下になっていた」とぼうぜん自失。「ブナの寿命は300年前後とされる中、白神の主のように堂々としていただけに残念」と惜しむ。
関係者らによると、400年ブナは、白神山地(93年に世界自然遺産に登録)の自然保護運動に尽くした藤里町藤琴の故・鎌田孝一さん(21年12月に91歳で死去)が半世紀以上前に保全を訴えたことで伐採を逃れた数少ない巨木という。
鎌田さんは、林野庁の拡大造林計画で伐採の危機にあった岳岱のブナを含む自然環境の保護を求め、実際に山を歩いて写真を撮影するなどし、その貴重さを地元の営林署に5年にわたって訴え、73年度に「岳岱風景林」(92年に自然観察教育林に変更)の指定につながった。自然保護団体「白神山地のブナ原生林を守る会」の理事長として、ブナ原生林の分断を招く道路の建設反対運動にも熱心だった。
斎藤さんは、400年ブナの樹齢について鎌田さんが「実際は400年をはるかに上回るのでは」と話すのを聞いたことがある。ブナの老木は幹の中心部が空洞となっていることが多く、正確な樹齢を把握するのは難しい。「岳岱は1月に4メートル前後の積雪があったと思われる。上部の大枝に雪がたまりやすく、樹勢の衰えに雪の重みが加わったのだろう。鎌田さんが亡くなって間もなく倒れたのは奇遇だ」と話す。
林野庁米代西部森林管理署(秋田県能代市)は雪消えを待って5月中旬~下旬にも現地で倒れた状況を確認し、跡地について検討する予定。秋田白神ガイド協会は3日の総会で400年ブナについて意見を交換。「そっと眠らせた方がいい」という声のほか、後世に伝えるため自然環境に配慮したモニュメントの設置や、何らかの形での保存、樹齢の調査を望む意見が出た。協会は今後、行政にも意見を伝えていくことにしている。