北海道・知床半島沖で観光船「KAZU I(カズワン)」(19トン)が浸水し、乗っていた26人が行方不明となった事故で、第1管区海上保安本部(小樽市)は24日、知床岬の近くで計10人を発見し、いずれも死亡が確認されたと発表した。
現場海域の海面水温が2~3度ほどと低く、前日に消息を絶ってから長時間が経過。海保などは残る16人の乗船者や船体の発見を急いでいる。
死亡が確認されたのは、男性7人、女性3人で子どもは含まれていない。北海道斜里町によると、観光船の乗船者は13家族で、北海道、福島、千葉、東京、岐阜、大阪、兵庫、香川、福岡各都道府県に在住。国土交通省によると、10歳未満から70代という。
同本部は観光船の乗組員について、船長の豊田徳幸さん(54)=北海道斜里町=、甲板員の曽山聖さん(27)=東京都調布市=と公表。昨年6月の座礁事故で、豊田船長が今年1月、業務上過失往来危険容疑で書類送検されていたことも明らかにした。
同本部によると、24日午前5時すぎ、消息を絶った場所から約14キロ離れた知床岬の先端近くの海面で、3人が浮かんでいるのを発見。その後、付近の岩場などで計7人が見つかった。
観光船は23日午後1時20分ごろ救助を要請。「船首が浸水し、30度くらい傾いている」と報告し、通報から約1時間後に連絡が取れなくなった。同本部は転覆、沈没した可能性が高いとみている。
運航会社の「知床遊覧船」(斜里町)などによると、同日午前10時に同町のウトロ港を出発後、知床半島西側沿岸を遊覧し、半島先端の知床岬で折り返して同午後1時ごろ帰港する予定だった。救助要請があったのは知床岬南西の海岸付近で、陸路での接近が難しく、海保や自衛隊、消防などは海上と上空からの捜索を続けた。
国交省によると、観光船は昨年5月、海面に浮いたロープと接触して乗客3人に軽傷を負わせ、同6月にはウトロ港近くの浅瀬に乗り上げる事故を起こし、運航会社が行政指導を受けていた。
今回の事故を受け、同省は24日、海上運送法に基づき、知床遊覧船に対する特別監査を実施。運輸安全委員会も原因究明のため、船舶事故調査官3人を現地に派遣した。
[時事通信社]