社長交代後、離職相次ぐ=運航会社、人手不足の指摘も―知床観光船事故・北海道

北海道・知床半島沖で遭難した観光船「KAZU I(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」(斜里町)では数年前に社長が交代した後、船長らの離職が相次いでいた。同社で昨年3月まで働いていた元甲板員の男性によると、交代後に立て続けに5人が辞め、人手不足に陥っていたという。
カズワンの豊田徳幸船長(54)のフェイスブック(FB)などによると、豊田船長は以前、水陸両用車のドライバーだったが、新型コロナウイルス禍で退職後に同社で働き始めた。男性は「明るく真面目な人。操縦もうまかった」と話す。
ただ、豊田船長は周辺海域に精通しておらず、3月下旬にはFBに「ブラック企業で右往左往です」と記していた。会社で船に乗れるのは豊田船長と曽山聖甲板員(27)の2人だけで、男性は「たくさん仕事を押し付けられて余裕がなかったのでは」と推し量る。曽山甲板員は4月から同社で働き始めたばかりで、「明るい人」だったという。
社長については「海のことが分からない人だった」と指摘。悪天候で自社の船が出港できない状況でも「何で他は走っているのに、うちは出さないんだ」と詰問されたり、船が出せない日は社長が経営する宿泊施設で接客をさせられたりすることもあったという。男性は「前の社長の時は波が高くなったら休んでいた」と話し、今回の出港判断について「どうして行ったのか」と首をかしげた。
[時事通信社]