静岡県熱海市の大規模土石流を巡り、崩落した盛り土の土地の現旧所有者に遺族らが損害賠償を求めた集団訴訟で18日行われた第1回口頭弁論。土石流発生から10カ月以上が経過する中、裁判所に駆けつけた犠牲者遺族や被災者のなかに、母、瀬下陽子さんを亡くした瀬下さん3兄弟の末っ子、幸史さん(46)の姿もあった。陽子さんの遺影を抱えながら原告側記者会見に臨み、「『母さん、(裁判が)やっと始まったよ』と、心の中で話しかけていた」と胸中を明かした。
幸史さんは横浜市在住。「自他ともに母は3兄弟の中で僕のことが大好きだった」と振り返る。将来、陽子さんが一人になれば横浜市の自宅で一緒に暮らすつもりだった。「ようやく親孝行できるかなと思っていたが…」と無念さを口にした。
「双子のように何でも話した」という最愛の娘、西澤(旧姓・小磯)友紀さん=当時(44)=を亡くした小磯洋子さん(72)も、遺影を抱えながら悔しさをにじませた。
「盛り土がなければ誰も死ぬことはなかった。10カ月がたつが、昨日のように思う。今も毎日、涙しない日はない」。残された孫娘(5)の気丈な様子にも触れ、「つらいこともあるが、つらいといえないので陰で泣いている」と声を震わせた。
幸史さんの兄で被害者の会会長の雄史さんはこの日、法廷での意見陳述で「(土石流に巻き込まれ)母が受けたであろう苦痛を思うと今でも涙が止まらない」と母への変わらぬ思いを吐露し、声を詰まらせた。記者会見でも「1日に何回も遺影に話しかける」と明かし、その悔しさを原動力に、集団訴訟を通じて原因究明と責任追及を進める覚悟を改めて示した。