首都直下地震、被害想定見直し「死者6100人」「全壊・焼失19万棟」…耐震化進み4割減

東京都は25日、首都直下地震の新たな被害想定を発表した。最大の被害が想定される都心南部直下地震(マグニチュード=M=7・3)では、約19万4400棟の建物が全壊・焼失し、約6100人が死亡すると試算した。住宅の耐震化など防災・減災の取り組みが進んだ結果、2012年4月に示した前回想定から被害は4割程度減少した。
今回の想定見直しは、10年の経過による都市の状況の変化を反映するもので、都は今後、新たな地域防災計画を策定する。
見直しでは、都心南部直下地震や多摩東部直下地震など、震源が異なるM7クラスの六つの直下型地震を分析した。前回想定で最大の被害が発生すると見込んだ東京湾北部地震は、13年に政府の中央防災会議が当面の発生確率が低いとしたため、検討対象から外した。
都心南部直下地震では、江東区や江戸川区、荒川区などで震度7が観測され、区部の6割が6強の揺れに見舞われると予測した。冬の夕方、風速8メートルの気象条件で最も被害が大きく、約8万2200棟が全壊し、約11万2200棟が焼失すると見込んだ。焼失建物は23区のうち世田谷区が最多の約2万棟。大田区の約1万9000棟、江戸川区の約1万5000棟と続いた。
全壊・焼失する建物は前回想定から約10万9900棟減り、死者も約3500人減った。負傷者も約4割減少し、約9万3400人だった。避難者は約40万人減の約299万人、帰宅困難者は約64万人減の約453万人と見込んだ。
被害の減少は、国の耐震基準を満たした住宅の割合(耐震化率)が20年までの10年間で81・2%から92%に向上し、延焼の恐れがある「木造住宅密集地域」の面積が半減したことが要因となった。帰宅困難者の減少は、テレワークやネットの普及で人の移動距離が減ったことなどが理由だ。
12年の前回想定では、東日本大震災を受けて最大予測震度を6強から7に見直し、06年想定から死者が2倍近くに増加していた。