ウッドデッキに滑走痕、住民に注意され口論も…揺れる五輪レガシーのスケボー場整備計画

昨夏の東京五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)を象徴する施設として、東京都が臨海部で進めるスケートボード(スケボー)場の整備計画が揺れている。周辺で愛好者らが公園のベンチを壊したり、住民とトラブルを起こしたりする事例が相次いだためだ。環境の悪化を不安視する地元に配慮し、都は新施設の利用者にマナー講習を義務づける方向で検討を始めている。(渋谷功太郎、大原圭二)

2024年春に部分開業が予定される江東区有明地区の「有明アーバンスポーツパーク(仮称)」。東京五輪で堀米雄斗選手(23)らメダルを量産した日本勢が実際に滑った「ストリート」と「パーク」の両コースを一般に開放し、初心者向けの練習コースも新設する。
都スポーツ施設部の熊沢健一担当課長は「メダリストが滑ったところで練習ができる。五輪を機に興味を持った人から、大会を目指す選手まで幅広く使える施設にしたい」と語る。
同パークは、東京大会の設備を生かして都が整備する「大会レガシーゾーン」、民間事業者がスポーツ施設などを建てて運営する「多目的ゾーン」からなり、五輪のコースを再現するボルダリング施設なども設置。都はテニス会場の「有明テニスの森」、バレーボール会場「有明アリーナ」を含む一帯を「有明レガシーエリア」として一体的に整備し、街づくりの途上にある臨海部開発の起爆剤とする。

ただ、周辺に立ち並ぶ高層マンションの住民らは歓迎ムード一色ではない。
5月末の夜、近くにある区立公園では、スケボーに乗った男性が「禁止」を伝える貼り紙の前を走り去った。ウッドデッキには滑走痕が残り、練習時に傷つけられたというベンチもある。

区には21年度、「危なくて子どもが遊べない」といった苦情が計95件寄せられ、この公園の管理を区に委託された団体の土家遼介さん(28)は「繰り返し注意しているが、聞き入れてもらえない」と渋い顔だ。有明地区のマンションでは、敷地内を滑ろうとした人を住民が注意した際、口論になる騒ぎもあった。住人の男性(38)は「生活を脅かされてはたまらない」と憤る。
一方、公園内を滑っていた男子高校生(15)は「迷惑なのはわかっているが、練習できる場所がなくて困っている。気軽に使える施設を作ってほしい」と訴える。

茨城県境町の「境町アーバンスポーツパーク」では、利用前のマナー講習を義務化している。未成年者の講習には保護者の同伴も求める。施設外でも人や車の通行を妨げず、縁石などを傷つけないよう教え、苦情はほぼないという。運営会社は「スケボー文化を根づかせるためには、地域の理解が欠かせない」と強調する。
都も事態を把握しており、「地元に愛される施設」を目指して利用者のモラル向上に力を入れる。施設運営を任せる事業者にはマナー対策を課す考えで、利用者にも〈1〉施設外で滑走しない〈2〉ヘルメットなどの着用――といったルールの順守を呼びかける。騒音対策として、滑走音を減らすための改修工事も検討する。