山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円(463世帯分)を誤って1世帯に振り込み、同町福田下、無職、田口翔容疑者(24)が電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された事件を巡り、町は1日夜、住民向けの説明会を同町奈古地区の町民センターで開いた。参加した住民約100人に対し、花田憲彦町長は「町民の皆様や多くの方々に、大変なご心配やご迷惑をお掛けしたことを改めて深くおわび申し上げる」と陳謝した。
誤給付は4月8日に発生、町は回収困難に陥った事態を同22日に公表した。田口容疑者は5月18日、誤給付分の一部を自分の口座から別の口座に振り替えたとして県警に逮捕された。
説明会は、町が誤給付の9割超に当たる約4300万円を回収でき、花田町長や担当職員らの処分方針を示したことを受けて開催された。町側は回収までの経過を明かして誤給付に関わる事務処理上の文書などを示し「担当した職員はこの事務処理が初めてだったが、引き継ぎが十分でないまま処理したために起きた」と説明した。
また、回収困難な事態を公表した後の役場の状況については「全国から3000件近い電話があった」と明かし、職員のストレス調査を実施して問題があった場合は医療的なケアをするとした。
住民側からは「町長の処分内容は十分だと言えるか」「町内から逮捕者を出した責任をどう考えるのか」などの厳しい意見が出た。
参加した40代男性は「(町側は)『自分たちが悪くない』と強調していたと思う。説明会の開催も遅く、住民より町の都合が優先されている」と批判した。
説明会は1日を皮切りに、2日に宇田郷地区、3日に福賀地区の予定で開かれる。【近藤聡司】