どうなる?阿波踊り 「踊る阿呆」半減、「見る阿呆」従来の3割

徳島市で8月12~15日に予定されている阿波踊りが、3年ぶりに特設観覧席「桟敷(さじき)席」を設ける屋外の演舞場で開催される。6月から団体向けのチケット予約も開始。ハイレベルな踊りを披露するグループ「有名連」の演技に期待が集まる。一方、新型コロナウイルス感染への懸念から踊り手の参加が半分ほどしか見込めず、以前のような迫力が出せるのか不安も抱える。今年の祭りは本当に大丈夫なのか。【山本芳博】
例年、桟敷が特設される有料演舞場は4カ所あるが、今夏は規模を縮小し「藍場浜(あいばはま)」と「南内町(みなみうちまち)」の2カ所に絞る。しかも客同士の距離を空けるため6割しか収容せず、総座席数はコロナ禍前の3割の約4700席。チケット収入を確保するため2部入れ替え制で、各部の時間は2時間から1時間半に短縮される。
1部は午後6時に始まり、一つの連の演技時間は約6分間。前半に藍場浜で踊る15の有名連は2カ所ある無料演舞場の「新町橋」か「両国本町」で演技。後半は南内町に流れ、逆ルートをたどる15連と合わせて計30連が踊りながら練り歩く。
踊るも見るも「密」回避
コロナ前は「踊る阿呆(あほう)」も「見る阿呆」もすし詰め状態で楽しんできたが、今年は「密」回避で雰囲気が様変わりしそうだ。有名連は現在どこも4~5割ほどしか集まっていない。5月31日に開かれた3回目の「阿波踊り実行委員会」(事務局・徳島市など)で、有名連の一つ「阿呆連」副連長の立川真千委員は「どこの連もコロナで連員の参加が減るだろう。半数を目標にしたい」と厳しい現状を口にした。
阿波踊りを盛り上げる「鳴り物」(器楽隊)が成立するかも不安要素だ。例年は器楽隊と踊り手を合わせた100人前後の有名連を先頭に、後ろにスポンサーの企業連や一般連を引き連れ、計300人規模で有料演舞場を練り歩く。今年はコロナ禍で医療・教育関係者、高齢者と接触の機会がある連員は職場から参加を止められたり、自主的に辞退したりするケースが相次ぐ。「鳴り物」の楽器要員が不足している連もある。
有名連の一つ「うきよ連」は今回参加予定の連員が例年の半数以下の45人ほど。苦肉の策で、参加が22人しか見込めない別の有名連「独楽(こま)連」と合同連を組む予定だ。この他にも鳴り物不足などを理由に合同で組む動きがある。
有名連の人数が定まらない事態に
有料演舞場は全席指定で前回よりも原則200円値上げされ、当日券はS席2400円、A席2200円、B席2000円、C席と車椅子用席は1400円。7月には一般チケットの販売が始まり、それまでには出演プログラムを決めなければならない。ところが、実行委は現時点で34ある有名連がどう合同し、最終的に何連、何人が参加するか把握できていない。有名連が決まらないと、企業連や一般連の参加枠も決められず、苦悩している。
それでも有名連の一つ「天水連」で連長を務める山田実委員は「徳島市でこの夏、阿波踊りが開かれるのを知ってもらうために、もっと全国にPRすべきだ」と実行委の会合で力説した。今年の阿波踊り開催が県外ではあまり認知されず、このままでは全国各地に踊り手を抱える企業連や一般連が成立しないのではないかと不安が漂う。
企業連も一般連も連れず約30人の単独で参加を模索する「酔狂連」の江淵豊和連長は「連長をしてきた43年間で今夏の参加見込みが最も少ない。過去2年参加できていないので、今夏も不参加となると日々練習に励む連員の士気が低下して連自体が維持できなくなる」と危機感をあらわに。それでも「うちの連員は踊り手と鳴り物の両方をできるよう日ごろから練習しているので、今夏は何としても出演したい」と意欲をみせる。
実行委によると、6月の早い段階で有名連の参加意向を確認し、出演プログラムを決定。並行してポスターを計約7000枚作製し、鉄道各駅や道の駅、旅行代理店、商店街などに配布する。
また、新型コロナの感染予防対策として、踊りを披露する演舞場ではマスク着用を推奨し、飲食は禁止する。県外の観光客らを含めて踊りに飛び入り参加する「にわか連」は認める方向だ。