中傷消して…デマ被害の新人職員は初めて父に頼んだ 阿武町誤給付

山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円(463世帯分)を誤って1世帯に振り込んだ問題を巡っては、4月に採用されたばかりの町職員の男性についてミスをした張本人という事実と異なる書き込みがインターネット上で続き、名前や顔写真までさらされる事態になった。男性の家族は「いろいろなことが書かれているが、早く中傷が消えてほしい」と訴える。
「ネット上に書かれる中傷を見つけてから、ずっと頭から離れず冷静ではいられなくなった。『新人のミス』『フロッピー』などという言葉が独り歩きし、『(容疑者と)グル』と言われたことが一番ショックだった」。男性の父親が毎日新聞の取材に苦悩を語った。
男性は4月に町役場に入り、1カ月もたたないうちに誤給付が発生した。町が問題について発表すると、給付手続きの担当部署にいた男性を名指しし「新人のミス」など虚偽の書き込みがされるようになった。父親が気づいたのは5月中旬で、言いようのない不安に襲われた。
帰省した男性から問題に関与していないことを直接聞いたのは5月下旬のこと。胸をなで下ろす父に、男性が口にしたのが「ネット上の中傷を消してほしい」という相談だった。帰省の前日に、友人から知らされたという。親に心配をかけないよう何でも自分で解決しようとする息子から、頼まれごとをするのは初めてだった。
父親は町に連絡を取り、中傷の削除依頼など対応を求めた。花田憲彦町長は5月24日の記者会見で「興味本位と思われるような心ない書き込みもあり、本人たちが心を病むような状況になり、家族にも大変な迷惑をかけている」と述べ、節度ある対応を強く呼び掛けた。
最近の状況をSNS(ネット交流サービス)で尋ねると「みんな親切で働きやすい。感謝している」と入庁当初と変わらない返信が来た。男性は学生時代にボランティア活動に励んだ経験から「人の役に立つ仕事がしたい」と公務員を志望したという。父親は「のびのびと働いて、町民のために立派な公務員になってほしい」。町に平穏が戻り、息子に何の心配もなく仕事に打ち込んでもらうためにも、問題の早期収束を願った。【堀菜菜子】