名古屋出入国在留管理局(名古屋市)に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が2021年3月に死亡した問題を巡り、遺族が国に計約1億5600万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が8日、名古屋地裁(佐野信裁判長)で始まった。被告の国側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。遺族の妹2人が法廷で意見陳述し、「姉は見殺しにされた。日本政府には謝ってほしい。こんな悲しい目に遭うのは私たちで最後にしてほしい」と訴えた。
訴えたのは母スリヤラタさん(54)と妹のワユミさん(29)、ポールニマさん(27)の3人。訴状などによると、ウィシュマさんは21年1月には体調不良を訴え、2月に尿検査で飢餓状態を示す結果が出たが、点滴や入院などの治療を受けられないまま3月6日に亡くなった。入管は収容に耐えられない健康状態なのに違法な収容を続け、適切な医療措置を講じる義務を怠ったとしている。
ウィシュマさんの死亡を巡っては、出入国在留管理庁が21年8月、医療体制や情報共有、職員への教育が不十分だったとする最終報告書を公表。死亡に至った具体的な経過は特定できなかったとしている。
遺族らは同年11月、「死亡しても構わないという未必の故意があったからであり、殺人罪に当たる」として、当時の名古屋入管幹部らに対する殺人容疑の告訴状を名古屋地検に提出。地検が詳しい死因などを調べ、刑事責任を問えるかどうかを捜査している。【藤顕一郎、川瀬慎一朗】