航空自衛隊小松基地(石川県)のF15戦闘機が日本海に墜落し、搭乗員2人が死亡した事故で、空自は調査結果を取りまとめ、パイロットが機体の姿勢を正常に認識できなくなる「空間識失調」に陥った可能性があると指摘した。多くのパイロットが経験する症状だが、繰り返し事故は起きてきた。再発防止が強く求められている。(狩野洋平)
元ブルーインパルス隊長
「どんなベテランでも空間識失調で事故に遭うことを改めて認識した。ショックだ」。空自幹部はそう打ち明ける。事故は1月31日に発生。F15は小松基地を離陸後53秒で墜落した。
事故機は2人乗りで、搭乗していた田中公司空将補(当時52歳)と植田竜生3佐(同33歳)(いずれも事故後に特別昇任)は、全国の戦闘機パイロットを指導する「飛行教導群」に所属していた。
訓練で敵役を務める同群には、機体の知識や操縦技術に優れた搭乗員が配置される。田中空将補は同群トップの司令で、曲技飛行隊「ブルーインパルス」の隊長を務めたこともあった。
レーダー操作に集中か
空自は、墜落地点の海中から回収したフライトデータレコーダーを解析。離陸後に雲の中に入った事故機が右に旋回し続け、急降下した様子を確認。墜落の2秒前まで再上昇する操作をしていなかったことから、2人が空間識失調に陥った可能性があると判断した。
空間識失調は、雲の中や夜間などの視界不良時に、機体を急加速させたり、旋回させたりした時に陥りやすい。戦闘機パイロットの一人は「ベテランを含め誰にでも起こりうる症状で、経験したのは1度や2度ではない」と語る。
空自によると、空間識失調による事故を防ぐために重要なのは、高度計や速度計などの計器をこまめにチェックし、機体の状態を正しく認識することだ。
しかし、2機編隊を組んで訓練空域に向かっていた事故機は、先行するF15の位置をレーダーで捕捉できないと連絡しており、レーダー操作に集中し、機体の姿勢に注意が向いていなかった可能性があるという。