北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故を巡り、運航を自粛していたウトロ漁港(北海道斜里町)を拠点とする小型観光船が16日、今季の営業を始めた。「知床小型観光船協議会」の加盟3社は事故を受け、運航に関する自主ルールを策定した。この日は単独運航による危険を避けるため、乗客を乗せていない別の観光船が一緒に航行するなどした。協議会にはカズワンの運航会社「知床遊覧船」も加盟社として残っているが、今回のルール作りには関わっていない。
この日の運航は1回で、「ホワイトリリー旭川」の「ドルフィンⅢ」(19トン)が午前10時ごろ、観光客19人を乗せて出発した。全ての乗客が救命胴衣を着用し、「ルシャ海岸」で折り返す1時間40分のコースを楽しんだ。昨秋から「いつか行きたい」と考えていたという千葉県の女性(20)は、海から見る知床半島の雄大な自然を家族と楽しんだ。「事故があって不謹慎かとも思った」と表情を少し曇らせながらも、「初めて船上からヒグマを見たので満足です」と振り返った。
金婚式の記念に山梨県から来た下條好雄さん(76)は、事業許可が取り消された知床遊覧船について「安全管理が徹底されなかったのだから仕方ない。ルールを厳しくしないと繰り返される恐れがある。今日は安心して乗れた」と話した。
3社の決めた自主ルールは、複数社による運航可否の判断▽単独運航を極力避け、1隻で運航する場合は待機船を準備する▽安全設備の統一--など。事故後、いち早く浸水を感知するための警報装置の整備のほか、衛星電話や業務無線など複数の通信手段を備えるなどの改善もした。
知床小型観光船協議会の神尾昇勝会長は「信頼回復に長い時間がかかる。マイナスからのスタートだが、少しずつ前に進みたい」と語った。【本多竹志】