今回の参院選では、勝敗のカギを握る32ある改選定数1の「1人区」のうち、自民党候補と野党候補による事実上の与野党一騎打ちは、11選挙区にとどまる見通しだ。野党は過去2回の参院選では全1人区で候補者を一本化したが、対決の構図は様変わりした。
公示第一声の場所に、岸田首相(自民党総裁)は福島、立憲民主党の泉代表は青森を選んだ。いずれも11ある与野党一騎打ちの選挙区だ。11選挙区のうち、野党候補が立民になったのは青森、岩手、新潟、山梨、熊本、鹿児島の6選挙区。共産党は和歌山の1選挙区。無所属候補に一本化されたのは福島、三重、愛媛、沖縄の4選挙区だった。
野党共闘が限定的になったのは、立民が昨年の衆院選で惨敗後、共産と距離を置いたことや、日本維新の会と国民民主党が比例票を上積みするため、積極的に選挙区で擁立したためだ。
立民は衆院選で、国家観や安全保障政策などで隔たりのある共産と協力した結果、議席を大きく減らした。このため衆院選後、「限定的な閣外協力」という共産との合意を棚上げした。反発した共産は今回、20の1人区に候補を立て、うち10で立民と競合した。
維新は衆院選で野党共闘に加わらずに政権批判票を集め、議席を4倍近くに増やした。今回の参院選でも、この路線を継続した。
国民は、政府の予算案に賛成するなど与党寄りの姿勢を強め、他の野党の反発を受けた。同じく旧民主党を源流とする立民と、山口など3選挙区で対決する。
野党が候補を一本化できなかった21選挙区のうち、象徴的なのが、立民の小川政調会長と国民の玉木代表の地元・香川だ。立民と国民に加えて、維新と共産も候補をそれぞれ擁立し、自民に挑む乱立状態になった。
野党は全1人区で候補を一本化した2016年は11勝、19年は10勝を収め、共闘に一定の成果を上げた。与野党が議席を分け合う傾向が強い複数区と異なり、1人区の勝敗は参院選全体の結果に影響する。野党は今回、共闘が十分に進まず、「それぞれが戦うしかない」(立民の泉代表)のが現状だが、政権批判票の分散は避けられそうにない。