日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙 安倍政治が終わり、平和志向の戦後政治も転機を迎えた

安倍晋三元首相が遊説中に暗殺されるという衝撃の中で投票日を迎えた今回の参議院選挙は、さまざまな意味で政治の転換の契機となるだろう。 第1は、1989年7月の参院選から始まった政治再編の模索が終わるという点である。 33年前の選挙では、リクルート事件、消費税導入の衝撃の中で、自民党による一党優位体制がほころびを来した。以後30年間、日本政治では選挙制度改革をテコとした政党再編成の試みが繰り返された。自民党が1990年代の危機をしのいで生き残ったために、政党再編のテーマは自民党に対抗する2大政党の一角をつくり出すことに絞られた。 自民党による1党優位体制が続く 民主党政権崩壊後、2大政党の夢はついえたかに見えたが、2015年の安保法制反対運動を起点に選挙協力による野党ブロックの形成という方法で、立憲民主党を軸とした野党結集が進んだ。しかし、昨年秋の衆議院選挙で野党協力は失敗という烙印を押され、2大ブロックの対決という構図はこの参院選では成立しなかった。 衆院選では日本維新の会が躍進し、参院選の比例区でも野党最多の得票を挙げた。また、日本共産党との協力を嫌う国民民主党は予算に賛成し、与党に近づいている。両党は自民党政権を前提として、政権に提案を聞いてもらうことに自らの役割を求めている。政権交代を起こせる大きな野党は幻影となった。 立憲民主党は泉健太代表の下で体制立て直しを図ったが、低迷から抜け出せる展望は開けなかった。今後当分の間、自民党による一党優位体制が続くことになる。 30年間追求してきた政権交代可能な政党システムというテーマに取り組むためには、立憲民主党を軸に野党を再構築するしかない。その際に重要なのは、連合の役割である。民主党の時代には、連合が支えて政権交代を目指していた。 しかし、芳野友子会長の下では、共産党と協力しないことが強調され、立憲民主党の指導部もそれに同調した。それゆえ、参院選の1人区での戦いも、共産党や市民を巻き込んだものとはならず、前回、前々回のようなエネルギーを生み出せなかった。 すぐに政権交代の道筋を描くことは困難だが、当面、翼賛体制に反対する強い野党の結集に向けて、立憲民主党と連合が方向性を共有することが必要である。選挙協力はその後の話である。 狭い選択の幅の中で議論することになる 第2は、戦後政治に流れてきた平和志向の終わりという点である。 憲法擁護の旗頭だった社会民主党はかろうじて1議席を獲得したが、衰弱は止まっていない。2020年夏に立憲民主党からの合流呼びかけをめぐって分裂したことが響いている。ウクライナ侵攻を受けて安全保障が重要な争点となった選挙で、伝統的な憲法9条擁護の訴えが広い支持を集めることはなかった。今後は、自衛隊と日米安保の運用について狭い選択の幅の中で議論することになるのだろう。

安倍晋三元首相が遊説中に暗殺されるという衝撃の中で投票日を迎えた今回の参議院選挙は、さまざまな意味で政治の転換の契機となるだろう。
第1は、1989年7月の参院選から始まった政治再編の模索が終わるという点である。
33年前の選挙では、リクルート事件、消費税導入の衝撃の中で、自民党による一党優位体制がほころびを来した。以後30年間、日本政治では選挙制度改革をテコとした政党再編成の試みが繰り返された。自民党が1990年代の危機をしのいで生き残ったために、政党再編のテーマは自民党に対抗する2大政党の一角をつくり出すことに絞られた。
自民党による1党優位体制が続く
民主党政権崩壊後、2大政党の夢はついえたかに見えたが、2015年の安保法制反対運動を起点に選挙協力による野党ブロックの形成という方法で、立憲民主党を軸とした野党結集が進んだ。しかし、昨年秋の衆議院選挙で野党協力は失敗という烙印を押され、2大ブロックの対決という構図はこの参院選では成立しなかった。
衆院選では日本維新の会が躍進し、参院選の比例区でも野党最多の得票を挙げた。また、日本共産党との協力を嫌う国民民主党は予算に賛成し、与党に近づいている。両党は自民党政権を前提として、政権に提案を聞いてもらうことに自らの役割を求めている。政権交代を起こせる大きな野党は幻影となった。
立憲民主党は泉健太代表の下で体制立て直しを図ったが、低迷から抜け出せる展望は開けなかった。今後当分の間、自民党による一党優位体制が続くことになる。
30年間追求してきた政権交代可能な政党システムというテーマに取り組むためには、立憲民主党を軸に野党を再構築するしかない。その際に重要なのは、連合の役割である。民主党の時代には、連合が支えて政権交代を目指していた。
しかし、芳野友子会長の下では、共産党と協力しないことが強調され、立憲民主党の指導部もそれに同調した。それゆえ、参院選の1人区での戦いも、共産党や市民を巻き込んだものとはならず、前回、前々回のようなエネルギーを生み出せなかった。
すぐに政権交代の道筋を描くことは困難だが、当面、翼賛体制に反対する強い野党の結集に向けて、立憲民主党と連合が方向性を共有することが必要である。選挙協力はその後の話である。
狭い選択の幅の中で議論することになる
第2は、戦後政治に流れてきた平和志向の終わりという点である。
憲法擁護の旗頭だった社会民主党はかろうじて1議席を獲得したが、衰弱は止まっていない。2020年夏に立憲民主党からの合流呼びかけをめぐって分裂したことが響いている。ウクライナ侵攻を受けて安全保障が重要な争点となった選挙で、伝統的な憲法9条擁護の訴えが広い支持を集めることはなかった。今後は、自衛隊と日米安保の運用について狭い選択の幅の中で議論することになるのだろう。