「盗撮のカリスマ」率いる「愛好家」集団、逮捕のきっかけは「小さな違和感」

「盗撮のカリスマ」と呼ばれる男が率いるグループによる組織的な露天風呂の盗撮事件。事件が表面化したのは、静岡県警自動車警ら隊所属の地村美貴警部補(46)ら3隊員がパトロール中に感じた小さな違和感がきっかけだった。一連の事件では6人が逮捕され、捜査は今も続いている。(貞広慎太朗)
昨年10月上旬の深夜、国道1号藤枝バイパス沿いの谷稲葉うぐいすパーキングエリアにある大型車専用の駐車場で、地村警部補らはトラックの間に停車する軽乗用車を見て違和感を覚えた。普通車用の駐車場は空いている。不自然だった。
「潜在化する犯罪をあぶり出す」。県内全域で日夜パトロールを行う自動車警ら隊の隊員は、不審者発見などにつながる「違和感」を見逃さないよう、日々感覚を研ぎ澄ましている。
車は、隣県ではない他県ナンバーのレンタカー。月曜の未明で「旅行帰りにしては遅すぎる」「家出かも」。パトカーで警戒中だった地村警部補と増田堅太巡査部長(30)、佐野裕介巡査長(35)は視線を交わした。「声をかけてみよう」と増田巡査部長が口を開き、他の2人がうなずいた。
車に近付くと、男が車内で仮眠していた。窓をノックして声をかけると驚いた様子だった。「持ち物を確認させてもらえますか」。車内からビデオカメラやのこぎりなどが出てきた。問い詰められ、男はついに盗撮を認めた。「(のこぎりは)盗撮に邪魔な木を切っていた」

銃刀法違反容疑で現行犯逮捕されたのは33歳の男(33)(兵庫県迷惑防止条例違反などで公判中)。露天風呂盗撮事件の捜査が始まった。
「これだけ組織的にやっていたとは」。押収した大量のハードディスクなどから続々と女性を盗撮した記録が見つかった。その量はあまりに膨大で、捜査員らは休日を返上して中身を確認した。県警幹部は、「膨大なデータで、いくら確認しても進まなかった」と話す。次第に、組織的に露天風呂盗撮を行っていたグループの概要が見えてきた。
「盗撮のカリスマ」と呼ばれる50歳の男(兵庫県迷惑防止条例違反などで公判中)が、インターネット掲示板などを通じて知り合った「愛好家」を率いていた。県警は、鹿児島県職員(懲戒免職)や三重県の国家公務員など計6人を逮捕。数百メートル離れた場所から望遠レンズ付きのビデオカメラで撮影する手口で、被害女性は盗撮に気づいていなかった。盗撮場所は全国各地に及ぶとみられる。「徹底的にグループを壊滅させる」。捜査は今も続いている。

盗撮事件の端緒をつかんだとして、地村警部補ら3隊員は6月末、関東管区警察局から表彰された。佐野巡査長は「被害者の拡大を防ぐことができてよかった」と話す。増田巡査部長は「潜っていた犯罪を表に引っ張り出せた達成感がある」と述べた。県警本部長が指定する職務質問技能指導官の肩書を持つ地村警部補は、「これからも職務質問を極め、後輩を育成していきたい」と意気込み、県内を巡回しながら「小さな違和感」がないか、目を光らせている。

外から見えない対策を…県警、旅館に盗撮防止策

組織的な露天風呂の盗撮事件を受け、県警生活保安課は今月、浜松市内の温泉旅館で開かれた県温泉協会総会を前に、旅館経営者らに対し、盗撮の手口や必要な対策などを伝えた。
生活保安課の大久保真吾課長と中水流誠也・課長補佐が、盗撮グループが事前に下見に訪れることや絶景を楽しめる場所が標的となることなどを紹介。高性能な望遠レンズを使えば、100~300メートル離れた山中からでもはっきりと撮影できることを、実際の画像を使いながら説明した。
大久保課長は、「狙われているという意識を持って防犯対策をしてほしい」と訴え、防犯カメラの設置や外から見えないようにするなどの対策を挙げた。
伊豆市の温泉旅館「船原館」館主の鈴木基文さん(68)は、「景観との兼ね合いも考えて、対策を検討していきたい」と話した。