ワクチンで拡大防げる? 新型コロナ「BA・5」今わかっていること

新型コロナウイルスの感染「第7波」では、オミクロン株の派生型「BA・5」が主流になっている。国立感染症研究所は「BA・5」の割合が今週時点で96%に達したと推計。感染力が強く、各地の新規感染者数は過去最多を更新している。「BA・5」の感染拡大に対処するのに、ワクチン接種は期待できるのか。「BA・5」で今、分かっていることをまとめた。
「BA・5」には多くの変異
新型コロナウイルスの表面には無数の「スパイクたんぱく質」がある。それが気管などヒトの細胞の表面にある受容体にくっつくと感染する。ワクチン接種を受けると、抗体がスパイクたんぱく質に取り付くので、受容体とはくっつかなくなり感染を防ぐ。
「『BA・5』は、これまでの変異株や派生型の中でも多くの変異がある」
コロナウイルスに詳しい水谷哲也・東京農工大教授(ウイルス学)はそう説明する。
これまで新型コロナでは、中国で見つかった最初の株のスパイクたんぱく質が大きく変異して「デルタ株」などの変異株が誕生した。その後「オミクロン株」の派生型「BA・1」や「BA・2」などが出現すると、「BA・2」のスパイクたんぱく質が小さく変異した「BA・5」が発生した。
水谷さんらによると、「BA・5」は中国で最初に見つかった株と比べて少なくとも計34カ所の変異があり、スパイクたんぱく質の立体構造や化学的な性質も変わっている可能性があるという。
34カ所の中には、ワクチンの感染予防効果を弱める特徴を持つ変異が3カ所あった。これまでの変異株や派生型で、この三つがそろったことはなく、水谷さんは、ワクチンの限界を懸念する。
「ワクチンによる抗体が、スパイクたんぱく質を認識しづらくなっている可能性がある」
重症化防ぐには有効か
海外の研究でも「BA・5」に対するワクチンの感染予防効果について、芳しくない結果が報告されている。
米ハーバード大の研究チームが7日に米医学誌で発表した論文によると、3回目の接種(ファイザー製)から2週間後、体内にできた「BA・5」に効果のある抗体と、中国で最初に見つかった株や「BA・1」に効果のある抗体の量をそれぞれ比べたところ、「BA・5」は中国で最初に見つかった株の20分の1程度、「BA・1」の3分の1程度しかなかった。
英オックスフォード大などの研究チームが7日に米科学誌に発表した論文も、同じような内容だった。研究チームは「『BA・5』の感染を防ぐ効果は高くない」とみている。
ただし、重症化を防ぐには有効だという。
北里大の中山哲夫特任教授(臨床ウイルス学)は「『BA・5』は重症化する可能性があるが、海外で感染者が増えても重症例が増えていないのは、ワクチン接種の効果」と考えている。このため「3回目接種や、高齢者らへの4回目接種は確実に進めるべきだ」と主張する。
一方、ワクチン頼みだけではなく、治療薬の積極的な活用を指摘する専門家もいる。
東京農工大の水谷さんは「昨夏のデルタ株による流行まではワクチンによって感染者をコントロールできたが、いまは難しくなっている。これからは飲み薬が、より重要な役割を果たすのではないか」と話した。【信田真由美、渡辺諒】