各地の学校では夏休みが始まり、夏の行楽シーズンが到来している。そんなムードに水を差すように、新型コロナウイルスの新規感染者は連日、各地で過去最多を更新している。感染の「第7波」をどう受け止めているのか、週末の観光地で話を聞いた。
北海道「予約の動きが止まった」
北海道の観光シーズンは7、8月がピークだ。観光名所・札幌市時計台は23日、記念撮影をする観光客でにぎわった。愛知から友人と訪れたという女性(63)は4泊5日で北海道の食を堪能。「いつまで自由に行動できるか、分からないですね」と話した。
札幌市の「京王プラザホテル札幌」は夏休みシーズンにかけて6~7割の客室が埋まっている。コロナ禍前には及ばないにせよ、昨年同時期と比べれば回復していた。そうした中での更なる感染拡大。営業戦略室の永原靖浩さん(36)は「新規予約の動きが止まってしまった。徐々に回復していく見通しが立っていたのに、旅行ムードが縮小してしまうのではないか」と懸念した。
海水浴場「気にはなるけれど」
神奈川県鎌倉市の由比ガ浜海水浴場には若者らが繰り出し、色鮮やかなパラソルを広げていた。コロナ禍の影響で休止が続いていた海の家も、3年ぶりに開設された。海の家の関係者は「好天の土曜日の人出としては少ないが、3年前よりは多い」。市によると、海開きの7月1日から18日までの人出は3年前より3割ほど増えているという。
横浜市から来た男性会社員(29)は「感染拡大は気になるが、海辺は風が抜けるし、みんな適度に距離を取ってくれる」と言い、友人の女性(24)も「屋外で食事ができる海辺の方が安心」と話した。由比ガ浜で海の家を経営する増田元秀・神奈川県海水浴場組合連合会副会長は「感染拡大に応じた防衛策を鎌倉市と協議して取り決めている。そうなってほしくはないが」と、複雑な胸の内を明かした。
関西屈指のビーチリゾート、和歌山県白浜町。白良浜海水浴場には23日も海水浴客が詰めかけた。白浜温泉旅館協同組合によると、加盟施設の5、6月の宿泊者数は前年の倍以上で、コロナ禍前の2019年の4分の3近くまで回復。史上最速の梅雨明けも味方し、7月も海水浴客数が20日時点で前年同月比2・2倍となるなど好調という。
同組合の沼田久博理事長によると、自身のホテルでは小学校の臨海学校がキャンセルになるなどの影響はあるが、新規予約も入り、現状では大きな落ち込みはない。今後については「行動制限をするかどうか、政府の方針次第」と語った。
和歌山県高野町の霊場・高野山では、宿坊寺院で個人客の予約キャンセルも出ている。恵光院の近藤説秀住職によると、1週間ほど前から予約が減っており、「夏休みに感染の山が来ているのは残念。観光客の多い紅葉シーズンには落ち着いてほしい」と願った。
医療逼迫の沖縄「見合った補償を」
1週間単位の人口当たりの新規感染者数が全国最多の状態が続き、医療提供体制も逼迫(ひっぱく)する沖縄。那覇市の国際通りでは22日夕、家族連れの観光客らの姿が見られた。
子供の夏休みに合わせ、家族4人で訪れた横浜市のコンサルティング業の男性(44)は「常にマスクを外さず、手の消毒もこまめにしている。店に入ったら大声で話さず、むやみに物に触れないよう子供に伝えている」。2~3カ月前に航空券などを予約したといい「ずっと自粛生活をしてきて、キャンセルしたくなかった」と話した。一方、土産物店の男性店長(48)は、この週の売り上げが前週比で半減したと明かし「観光業はどこも厳しい。行政は飲食業だけでなく実情に見合った補償を」と訴えた。
リゾート地として人気の石垣島がある沖縄・八重山地域でも、コロナ専用の病床使用率が70%を超えるなど感染状況が深刻だ。石垣島のホテルの男性支配人は「最近は毎日のようにキャンセルが出ている」とため息をついた。島の観光を支える人にも感染が広がり、タクシーは運転手不足で走行台数を減らしているという。「(感染激増の)前までは予約が回復していた。9月は今のところ予約が好調でも、先が見えない」と肩を落とした。
東京や大阪などと沖縄を結ぶ日本トランスオーシャン航空(JTA、那覇市)の広報担当者は「この夏の利用は昨年の倍の水準で、夏休みに期待していた。ただし、今後はどうなるか分からない」と話した。【高橋由衣、因幡健悦、竹内之浩、藤原弘、中里顕、竹内望】